2021.02.25 議員活動
第10回 産業復興や雇用を支援する仕組み
2 発災直後の自治体の雇用政策
前項で述べたような大規模災害時の雇用政策の特質を踏まえて、大規模災害が発生した直後の自治体の雇用政策として、事業者の雇用継続と労働者の生活支援を重点に、次のような対応が考えられます。
(1)関係機関と連携した情報収集
発災後、災害救助の支援等の業務が落ち着いた段階で、自治体の担当課が取り組むべきことは、現場の情報収集です。産業振興担当課と連携して、まず、地域内の事業所の被災状況を把握し、それぞれの事業継続の有無、従業員への対応状況などを聞き取ります。次に、国の労働局やハローワーク等を通じて、雇用相談の状況や国の雇用支援策などについての情報を集め、雇用支援のための助成制度などは企業に対しても情報提供します。また、失業者への生活支援のため福祉部門との連携も大切です。
雇用・労働分野の助成制度は、主に国が行い、自治体が事務を担当する部分が少ないので、自治体の雇用担当は、平時からハローワーク等との関係構築に努め、制度の知識を得ると同時に、地域の産業構造や主な事業所の状況についても一定の理解を深めておくことが大切です。
(2)災害直後の雇用政策
災害直後には、被災事業者や、被災により休業や失業を余儀なくされた労働者からの相談が自治体にも寄せられるため、これらへの対応が必要となります。その上で、当面の対応として次のような対策が考えられ、自治体は、これらの情報提供や申請手続の案内を行います。
ア 休業等の状態にある被災事業者への雇用維持のための支援(雇用調整助成金)
災害のため、当面、休業や操業停止をせざるをえない企業において従業員を休業させたり、本来的な操業が難しいため、その間、研修等を行う場合には、雇用調整助成金を、ハローワークを通じて受けることができます。雇用調整助成金は、もともと経済状況により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練又は出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されるもので、期間や限度額がありますが、対象労働者1人当たり8,370円/日を上限(2020年8月1日現在)として、休業の場合、休業手当の2分の1~3分の2が一定の日数分支給されます。これは、東日本大震災や今般の新型コロナウイルス感染症の影響により雇用調整を行わざるをえない場合も適用対象となっています。
イ 休業・失業した労働者への生活支援(緊急小口資金、総合支援資金、失業手当)
災害により休業や失業した労働者への緊急の生活資金確保のための措置として、まず、市町村社会福祉協議会による生活福祉資金の貸付けを受けることが考えられます。生活福祉資金にはいくつかのメニューがありますが、災害時には、緊急小口資金貸付と総合支援資金(生活支援費)貸付で当面の生活資金を確保することが考えられます。両方とも、本来は生活困窮者に対する生活再建のための貸付けで比較的簡便に有利な条件で少額の貸付けが受けられ、災害時にも活用されています。申請は市町村社会福祉協議会を通して行われます。
また、災害により失業した場合には、雇用保険により、雇用されていた期間や年齢等に応じて一定の期間、いわゆる失業手当(失業等給付基本手当)を受給することができます。失業手当はハローワークでの申請により、平均給与の約45~80%程度が支給されます。
これらの福祉関係や雇用関係の各種給付は、相互に補完し、又は併用することにより、被災した労働者の生活の支えになる場合があります。
しかし、災害により急に休業・失業した個々の労働者等は、このような制度や手続について、十分に知識を持ち合わせていない場合が多いので、自治体では、通常の被災者支援とともに、それぞれの事情に応じた制度等の情報を提供することも大切です。