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2021.02.25 議員活動

第10回 産業復興や雇用を支援する仕組み

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第20講 被災地域での雇用政策

 前講では、産業の復興を事業者の側から考えましたが、自治体が産業政策に取り組む大きな要因の一つが、住民の働く場の確保です。住民が働き、十分に持てる力を発揮することができれば、地域が元気になることにつながります。この意味では、自治体の産業政策は雇用維持のためにあるということもできます。
 しかし、災害が発生し、事業所が被災すると、事業者が事業を継続することが難しくなり、仕事を休業したり、又は失う住民が発生します。これらの住民への支援をすることも、自治体の災害復興政策の中では大切です。ここでは、災害に伴う雇用政策について考えます。

1 災害時の雇用政策の特性
 通常の経済不況時と異なり、大規模災害時における雇用政策の特性として、次のようなものが考えられます。

(1)多種多様な求職者が急増すること
 経済不況では、最初は特定の産業を中心に徐々に求職者が増えていく傾向にありますが、大規模災害では、地域的ではありますが、あらゆる産業がダメージを受けるため、一時期に多種多様な求職者が急増することになります。このため、事業所が再開し、求職者が新たな職に就くまで時間を要することとなり、長期の雇用支援が必要となります。

(2)対象が被災者と求職者の二面性を有すること
 大規模災害時に発生する求職者は、被災者であることも多く、地域の惨状を目の当たりにし、近親者が犠牲になっている場合もあります。このため、精神的なダメージを受けていることも多く、求職活動への意欲がなかなか生じにくい傾向がみられることがあります。東日本大震災でも、被災者の中には、被災後、一定時間が経過しても求職活動を積極的に行うことができない求職者が数多くみられました。このような求職者に対しては、心のケアも含めた福祉的な生活支援と連携した雇用支援も必要となります。

(3)地域の持続可能性と直結すること
 大規模災害では、広範囲な地域が被災しますが、一方で、災害の影響を全く受けない地域もあります。このため、家族を持つ子育て世代を中心とした求職者は、職を求めて被災地を離れ、その結果、急激な人口の減少につながる可能性があります。また、中高年齢者の場合は、再就職が難しいことから地域を離れることができず、被災地では高齢化が進行し、働く場が限られてくる中で、長期に失業状態になる場合があります。その結果、地域の衰退に拍車がかかることになります。
 この傾向は、被災地と被災していない地域の距離が離れている場合、顕著に現れます。被災地と被災していない地域の距離が阪神・淡路大震災と比較して離れている東日本大震災では、岩手県沿岸、宮城県沿岸北部、福島県浜通り地域などで人口の減少が急激に進んでいます。

(4)雇用のミスマッチが生じやすいこと
 大規模災害の発生後、通常、1〜2か月程度経過すると、徐々にいわゆる「復興需要」が建設業や流通業などを中心に起こります。この復興需要により、人材のニーズも高まり、建設業や流通業などの分野からの求人が増加しますが、これらの求人に女性、高齢者などの求職者が対応できる場合は少ないので、求人側と求職者側のニーズに「雇用のミスマッチ」が生じてしまいます。復興需要では、当初、需要の増加が一部の産業に偏ってしまうので、他の分野での求人ニーズの掘り起こしや、求職者への職業訓練などが必要となります。

(5)急激な雇用状況の変化が生じやすいこと
 復興需要は、災害により疲弊した地域経済にとって、カンフル剤としての効果がありますが、その効果は期間限定的なものです。災害の規模にもよりますが、阪神・淡路大震災の場合で2〜3年程度、東日本大震災の場合でも数年程度で、インフラの復旧工事などへの公共投資がピークを過ぎた頃から徐々に復興需要の伸びが鈍化し、求人状況も変化してきます。このため、雇用の悪化を回避するため、復興需要だけに頼らず、その間に継続雇用に結びつく産業を育成していくことが求められてきます。

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