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2021.02.10

「未来カルテ」を活用した自治体施策の構築

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公共的市民を育成する「未来ワークショップ」

 この「未来カルテ」の予測を地域の将来を担う中高生や若手社会人に伝え、2050年の未来の市長になったつもりで今の市長への政策提言を考えてもらうワークショップが「未来ワークショップ」である。我々が主催するものだけで、2020年末までに20回を数えている。2018年からは「未来ワークショップファシリテーター養成講座」を開講しており、この講座の受講者が開催した例もある。
 標準的な未来ワークショップは、1日かけて行われる。午前中に、未来カルテ情報、開催自治体の情報、災害・温暖化などのリスク情報、AI・ロボットなどの技術開発可能性情報など、様々な情報をインプットする。多岐にわたる情報をインプットするために、項目ごとに作業帖にメモをとる時間を設ける。午後には、班ごとに模造紙を囲んだ作業を行う。参加者は午前中に作成した作業帖を見ながら、まず、2050年の未来市長が直面すると思われる課題を書き出す。そして、その課題を見ながら、今から行っておくべき政策のアイデアを書き出す。政策のアイデアは、「いいねシール」を貼ることを通じて、参加者間で評価し合う。たくさん「いいねシール」をもらった提言や、班として一押しの提言を、市長に提案して、ワークショップは終了する。
 未来ワークショップの参加者アンケートによると、このワークショップに参加することによって「地域に貢献したくなった」、「地域のことをもっと知りたくなった」、「いろんな人と協働することができると思った」という参加者が多いという傾向が見られた。未来ワークショップには、地域のことに関心を抱く公共的市民を育成する効果が見られるのである。
未来ワークショップを授業の一環として実施する高校や中学校も現れるようになった。福井県勝山市の勝山高校、鹿児島県西之表市の種子島高校・種子島中学校では、総合的な学習の時間のプログラムとして未来ワークショップを実施した。種子島高校では、未来ワークショップに向けた調べ学習と、未来ワークショップで出されたアイデアをさらに具体化する学習を追加した年間のプログラムを運用している。
未来3-4

「未来ワークショップ」と自治体の施策

 未来ワークショップは、自治体の施策の中でも様々に活用されている。例えば、千葉県松戸市においては若手職員の研修プログラムとして未来ワークショップを実施した。日頃顔を合わせることがない様々な部署の20代若手職員が集まって大変盛り上がったことを記憶している。千葉県九十九里町、愛知県北名古屋市では、職員テーブルを設けて、市町の職員が中高生の未来ワークショップに参加した。中高生と職員との交流の場ともなった。福岡県田川市では、市の総合計画の策定に向けて市職員が参加する未来ワークショップを開催した。この際には、新型コロナ対応として、千葉からリモートでファシリテーションを行った。市役所職員の採用時のディスカッションの素材として使われた例もある。
 新型コロナ対応としては、田川市で行ったような半リモート型の未来ワークショップを進化させ、2020年12月には、千葉県君津市で、参加者も自宅などのPCから参加するという完全リモート型の未来ワークショップを実施した。
 現在、環境研究総合推進費「基礎自治体レベルでの低炭素化政策検討支援ツールの開発と社会実装に関する研究」(2019-2021:研究代表者・倉阪秀史)を用いて、2050年カーボンニュートラルシミュレーターを開発中である。未来ワークショップでのインプットの一つとして、カーボンニュートラルに関する情報も追加し、地域の発展と脱炭素を同時に検討できるようにしていくこととしている。
 未来カルテのダウンロードや脱炭素を含めた取組みの最新情報は、プロジェクトのウェブサイト(http://opossum.jpn.org/)に掲載しているので、ご参照いただければ幸いである。
 

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