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2021.02.10 議員活動

第5回 選択肢作成と議会

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6 規範的言語における再定義の重要性

 規範的言語には、何を意味しているかということを共通して理解することについて難易性(=「規範的言語の難易性」)があることを、前節では公平と自由について例示した。そこで重要になるのは、北山が指摘するように、規範的言語の意味内容を細分化し再定義することである。公平の場合であれば、「分配の受取人が誰か」、「分配されるものが何か」、「分配の過程がどのようなものか」という分配の内容を変えることによって、すなわち再定義をすることで正しい公平を探ることが求められているのである。もちろん、再定義の内容がどれだけの同意、納得を生み出すかは分からない。しかし、新たなアイデアを用いて従来とは違う定義をすることによって、政治的結果が変わっていくのである(北山 2015:110)。もちろん政策は、その場で変わることもあるし、ときには関係者が自分の面子(めんつ)に重きを置くことで変わらないこともある。しかし、次の機会には面子を立てた当事者がいなくなり政策が変わることもある。当事者がいたとしても政策が変わることもある。規範的言語の意味内容を細分化し再定義することは、「規範的言語の難易性」を超克することにつながる。

7 自治体政府の目指すべき規範・価値と効率性・有効性の定義

 ここでは、自治体政府の目指すべき規範・価値を改めて考えよう。企業が利益を追求するのに対して、自治体政府は必ずしも利益を追求しない。歳出に必要な歳入は、基本的には税収によって賄われる。国からの地方交付税や補助金などの歳入もあるが、それに充てる財源も最終的には国民 (市民)からの税収によって賄われている。そして、生活保護、市民病院をはじめとする福祉・医療サービスに象徴されるように、企業(民間)では成立しにくいサービスをシビル・ミニマムとして担っている。
 しかしながら、自治体政府にも効率性が求められる。一般に「効率性」を上げるとは、産出/投入を最大にすることである。効率性には、投入が一定に決まっている場合は産出が高いほど効率性が高い「能率性」と、産出が一定に決まっている場合は投入が少ないほど効率性が高い「経済性」がある(北山 2015:110-111)。また、意図した効果が発現したかを問う基準には「有効性」がある。有効性の観点からは、大量の資源を投入しても目的が達せられれば有効だと判断される(伊藤 2015:237)。自治体政府には、このうちいずれの基準で、具体的にはどこまでで線を引くのか判断が求められる。この判断は難しいことが少なくない。判断が難しいと(専門的になると)議会は行政に判断を委ねることも少なくないが、自治体政府の存在は、前段に述べたように必ずしも利益を追求しなくともよいことにあることを忘れてはならない。

8 費用便益分析

 秋吉が述べるように、政策手段が検討される段階では、それぞれの手段がもたらす効果が同時に検討される。特に、大規模な財政支出を伴う公共施設整備事業(2)では、投資に見合う効果があるのか、常に議論の対象となる。それを分析するのが費用便益分析である。費用便益分析では、プロジェクトが社会に対してもたらす便益とそのプロジェクトにかかる費用とが算出される。算出された費用と便益の値をもとに意思決定の判断が行われる(秋吉 2017:85-86)。
この費用便益分析については、国等で策定したマニュアルがある。議員もこのマニュアルを知ることで、B/C(ビー・バイ・シー)と呼ばれる言葉で言い表せるような費用(Cost)と便益(Benefit)の関係が理解できる。道路の場合であれば、走行時間短縮便益、走行経費減少便益、交通事故減少便益が便益としてカウントされ、事業費、維持管理費が費用としてカウントされる。B/Cが1よりも大きい場合(B/C>1)が事業採択の前提条件となる(国土交通省道路局都市局「費用便益分析マニュアル」2018年2月)。なお、このマニュアルによれば、検討年数は、道路施設の耐用年数等を考慮し50年となっている。変化の激しい今日、不確定要素が多い中で、議会にも50年の様々な変化を見据えた慎重な判断が求められる。

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