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2021.01.15 議会運営

第75回 懲罰に対する司法審査の是非/棄権について

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棄権について

Q議員Aが議員定数改正条例案について自らの意思を表明したくないとして棄権をしたいと考えている。このとき討論において棄権の理由を表明し、表決で退席すれば、表決上、棄権したものとして議会だよりや会議録へ掲載されるか。

A棄権とは、案件に対して議員が賛成又は反対を決定することができない場合に自らの意思を表明せず表決に参加しないことをいう。棄権は地方自治法、標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)に規定がないことから法律上規定されていないが、禁止もされていないため行うことは可能である。しかし、議員は住民の負託を受けた代表として案件に対する審議を十分に尽くし、意思を表明する責務があるということに留意する必要がある。
 ここで、討論において議員は棄権の理由を述べることが可能であるかを考えると、市会議規則51条2項により、討論は可決又は修正可決あるいは否決の理由を述べる場であり、討論を行うに当たっては議長に事前に賛成又は反対の別を記載した通告書を提出する必要があることから、賛成でも反対でもない棄権についての討論の通告書を提出することはできず、提出しても議長は当該通告を無効なものとして取り扱うこととなり、議員は棄権の理由を述べることができない。

【市会議規則51条】
②  発言通告書には、質疑についてはその要旨、討論については反対又は賛成の別を記載しなければならない。

 また、表決において棄権をするに当たっては議場から退場することとなるが、退場するタイミングを議長が議事運営でうまく差配しないと、議員は棄権することも難しい。すなわち、一般的には棄権は他の議員の賛成又は反対の討論を聞いても賛否の態度が確定しない場合に表決を行わず議場を退場することなので、討論と表決の間に退場に当たっての一定の時間を議長がとらないと、棄権のための退場を行うことはできない。しかし、議事運営上は討論と表決は連続性があるため、あらかじめ棄権者がいることが分かっていれば議長の措置もとりえるが、棄権者の有無が分からないと取り扱いようがないという実態がある。そのため棄権者は、本会議開会前までに議長に該当案件について棄権する旨の事実上の申出をすることが適当である。
 次に、議員が棄権した場合は議会だよりで議員の棄権を掲載できるかについてであるが、議会だよりについては地方自治法や市会議規則の規定は存在しないので、各議会での先例や申合せ等により適宜取り扱って問題ない。
 会議録では議場を退場する議員を棄権者として表示することはできない。なぜなら会議録上は通常、議場への入退場について議員の氏名を逐一会議録に記載することは行わない。また会議録には会議ごとの出席者の氏名と欠席者の氏名を記載することとされているが、わずかの時間でも議員が議場に出席すれば議会は日を単位として活動していることから、当該議員は出席者として会議録に記載されることとなる。それゆえ、棄権者を会議録に掲載をすることは難しい。ただし、昨今では本会議における審議がテレビやインターネットによる生中継や録画中継によりなされていることから、会議録での確認でなく映像による確認により棄権者の確定を事実上行うことが可能である。
 棄権をすることは地方自治法、市会議規則に禁止規定がないことから懲罰の対象とならないが、表決は議員の責務として十分に果たす必要があることを認識する必要がある。

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