2021.01.15 議会運営
第75回 懲罰に対する司法審査の是非/棄権について
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
懲罰に対する司法審査の是非
市議会議員Aは、議会における言動により所属するB議会から陳謝の懲罰を科された。しかし、Aは当該懲罰に従わなかったため、B議会からさらなる懲罰として出席停止の懲罰を科された。この二つの懲罰に対しAは訴訟を提起するつもりであるが、裁判所で当該懲罰は司法審査の対象となるか。
議会が科した懲罰に対する司法審査の対象の是非は、令和2年11月25日最高裁判決により、懲罰のうち戒告、陳謝に対しては司法審査が及ばないが、出席停止、除名については司法審査が及ぶものとされた。
これにより昭和35年10月19日最高裁判決(民集14巻12号2633頁)において除名以外は司法審査の対象とならないとされた判例は変更されることとなった。
判例変更の理由として、議員は、憲法上の住民自治の原則を具現化するため、議会が行う条例の制定改廃、予算、決算、契約等の各事項等について、議事に参与し、議決に加わるなどして、住民の代表としてその意思を当該普通地方公共団体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負うものとされている。
地方自治法134条・135条に基づく出席停止の懲罰は、住民代表としての責務を負う公選の議員に対し、議会がその権能において科する処分であり、これが科されると、当該議員はその期間、会議及び委員会への出席が停止され、議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなるといえる。
このような出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない。
そうすると、出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるものの、裁判所は、常にその適否を判断することができるというべきであるとした。
それゆえ、普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となると判示された。
以上より、今後は懲罰である戒告・陳謝は今までどおり議会の自律権に委ねられたものであることから司法審査の対象とならないが、出席停止・除名については司法審査の対象となる。