2021.01.15 議員活動
第4回 課題抽出と議会
10 委託と評価
委託に関しては、議員も当該自治体における行政の人員、ノウハウ、財源、そして委託先の存在に関心を持つことが大切である。そして、委託先選定に際して適切な評価が行われていることを確認することも必要である。そこには、行政が委託する業務内容についての議員の力量も問われてくる。自治体職員にノウハウがなくて委託する場合、業務内容の成果をどのように評価することができるのか。委託先選定に際しては、そのことも含め適切な評価を行うことが必要である。そのため、委託内容として職員の政策力向上に役立つ研修(委託する業務内容の成果を評価できる研修)なども求められよう(このことは、行政の行う委託だけでなく、議会が自ら行う委託にも当てはまる)。
また、委託する業務内容について求められる議員の力量は、委託する業務内容全般について行政職員の力量を上回っていることが期待されているわけではなかろう。期待されているのは、業務内容についての理念なり手法なりについて、一つでよいから行政職員の力量を議員が上回るものを持っているということであろう。その期待に応えるためには、議員の学習が必要になる。
なお、このことは、行政内部における事業採択や予算査定の際にも当てはまる。実施計画策定や予算編成の部局においては、事業採択や予算査定の際における担当部局との議論において、担当部局を上回った業務内容についての理念なり手法なりを示し、その切り口から担当部局を説得している。説得には、事業内容や予算を膨らませる場合と減らす場合がある。
11 多元マルチ型連鎖による「政策の再革新」の常態化
自治体を取り巻く環境が常に変化する中で、議会と行政は切磋琢磨(せっさたくま)しながら、より良い政策を実施することが求められている。このことは、「二元代表制における自治体内の『政策の再革新』の常態化」ということができる。また、伊藤修一郎は、「自治体から国へ、国から自治体へ、そしてまた国へという影響関係の連鎖と、先行自治体から後続自治体、そしてまた先行自治体へという循環が組み合わされて、政策革新が引き起こされる」と指摘する(伊藤 2015b:262)。前者については、自治体への影響が大きくなったと感じられる国際機構を含めた、「自治体、国、国際機構による政府マルチ型連鎖による『政策の再革新』の常態化」ということができよう。後者については、自治体間の連携・協力のもと切磋琢磨が進みつつある現在、「自治体間の『政策の再革新』の常態化」ということができる。
さらに、市民、団体、企業も公共政策に関わっている。政府政策にも影響を与える。このことは、「市民、団体、法人、自治体、国、国際機構という多元マルチ型連鎖による『政策の再革新』の常態化」ということができる。これらの常態化には、いずれも自治体議会が含まれている。議員には、このような多様な「政策の再革新」の存在を踏まえた議会活動が求められている。