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2020.12.25 議員活動

第8回 住居を失った被災者を支援する仕組み

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2 住宅再建支援にも「共助」の考え方を
  被災者が新たに自宅を再建する場合の被災者生活再建支援制度は、順次拡充されてはきましたが、現状で最高額300万円であり、住宅の取得費用を考えると十分とはいえないものです。もちろん、国内外からの義援金の配分や自治体独自の支援などもありますが、被災地域の人口の多寡により、義援金の世帯当たりの配分に大きな差が生じることがあり、自治体の支援も財政力により異なります。また、公金による支援をどこまで増やすかは、国民の理解が必要です。
 このように考えると、「公助」と「自助」の中間の「共助」の部分をより拡充してはどうかと考えます。すなわち、我が国のように災害の多い国では、保険の活用をもっと考えてもよいのではないでしょうか。民間の保険会社などの地震保険への加入促進のための税控除なども行われていますが、地震保険の加入率は全国平均で3割程度です(7)。自治体レベルでも、災害に備えた損害保険の普及や加入促進の努力義務などについて、例えば防災条例等で規定することも考えられます。

3 住まいを転々とする被災者間のつながりの継続が復興後のまちづくりにつながる!
 住居を失った被災者は、避難所⇒応急仮設住宅⇒災害公営住宅へと移り住むことを余儀なくされます。しかも、避難所や応急仮設住宅は、発災後、時間が経過するに従い、集約される場合が少なくなく、何度も住まいを転々とする場合があります。住まいを転々とするたびに、コミュニティのつながりが失われることも多々あります。
 一般にコミュニティ内のつながりなどの社会関係資本(ソーシャルキャピタル)(8)が一定程度あると、人々は幸福感を感じるとされ、これは、復興後の地域づくりを考えると重要です。自治体には、災害後の地域の復興も考え、被災者間の社会関係資本を蓄積させていく取組みも求められます。
 

(1) 兵庫県「阪神・淡路大震災の被害確定について(平成18年5月19日消防庁確定)」(http://web.pref.hyogo.lg.jp/kk42/pa20_000000015.html〔2020年12月11日閲覧〕)参照。
(2) 「データでみる阪神・淡路大震災:義援金1793億円を超える善意」神戸新聞NEXT(https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/sinsai/graph/p5.shtml〔2020年12月11日閲覧〕)参照。
(3) 例えば、雲仙・普賢岳噴火災害(1990年)の約3,219万円、北海道南西沖地震(1993年)の約2,519万円など(神戸新聞NEXT・前掲注(2)参照)。
(4) 「災間を生きる 震災人脈【9-1】生活再建支援法 被災者救済、市民力の結晶」神戸新聞NEXT(https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/sinsai/25/rensai/201912/0012995807.shtml〔2020年12月11日閲覧〕)及び「災間を生きる 震災人脈【9-2】生活再建支援法 国の『壁』破り個人補償へ」神戸新聞NEXT(https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/sinsai/25/rensai/201912/0012995810.shtml〔2020年12月11日閲覧〕)参照。
(5) 山崎栄一『自然災害と被災者支援』(日本評論社、2013年)35頁参照。
(6) 「阪神大震災の生活再建資金貸し付け制度、53億円未返済」朝日新聞デジタル2020年1月13日付け(https://www.asahi.com/articles/ASN1D53J3N1DPTIL007.html〔2020年12月11日閲覧〕)参照。
(7) 日本損害保険協会の調べでは、2019年度の地震保険の世帯加入率は33.1%でした(https://www.sonpo.or.jp/insurance/jishin/ctuevu00000001fo-att/kanyu_jishin.pdf〔2020年12月11日閲覧〕)。
(8) 社会関係資本(ソーシャルキャピタル)とは社会学等の概念で、「人間関係」、「信頼」、「人的なネットワーク」などを指し、社会関係資本の豊かな人は、幸福感を感じ、健康状態も良好な場合があるとされています。

 
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