2020.12.25 議員活動
第8回 住居を失った被災者を支援する仕組み
3 災害援護貸付金の制度概要
災害弔慰金、災害障害見舞金のいずれも市町村の給付として支給されますが、これらのほか被災者の生活再建のための貸付金として、「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき、市町村は条例を定めて災害援護貸付金を貸し付けることができます。
災害援護貸付金は、同一の都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1以上ある自然災害が発生した場合に、災害により世帯主が大けがをした世帯や、家屋が半壊以上の被害を受けた世帯などに、最高350万円を10年間貸し付ける制度です。
しかし、阪神・淡路大震災などの事例をみると、貸付けを受けた被災者の中には、被災後、十分な収入を得られる職に就くことができず、被災者の高齢化も進む中、償還の見通しがつかず、返済が滞っている例も多くみられるとの報道(6)もあります。貸付金の原資を国から借りている実施主体の市町村が国に対して返還義務を有していることから、今後、災害が増えると市町村の財政負担が増加していく可能性があります。
まとめ(議員としての着眼点はここだ!)
第8回では、災害からの復興過程における被災者の住まいの問題を中心に学びました。ここでは、議員の着眼点として以下の3点を指摘したいと思います。
1 地域特性等に合った応急仮設住宅の仕様づくりを!
応急仮設住宅の提供は、災害救助法に基づく「救助」として自治体が実施しますが、救助内容には「一般基準」と「特別基準」があり、特別基準の適用には、国との協議を行う必要があります。大規模災害が発生すると応急仮設住宅を迅速に建設する必要から、自治体は、国との協議が不要な一般基準による応急仮設住宅の建設を選択しがちですが、地域により気候風土が異なることや長期の居住を余儀なくされる場合もあることを考えると、応急仮設住宅の仕様の基準も地域や災害の状況に合わせて柔軟に対応できるものとすることが求められます。実際に、寒冷地が被災現場となった東日本大震災では、住宅の壁や床下の断熱が十分ではなく、後から追加工事が行われました。また、風呂のボイラーも追い炊き機能がなく、ボイラーを交換した事例もみられました。後からの追加工事は費用がかさむ場合もあるので、地域特性等に応じた基準の弾力化や国との協議の簡略化などが求められます。