2020.12.25 議員活動
第8回 住居を失った被災者を支援する仕組み
第16講 生活再建ための経済的支援の仕組み
前講では、住居を失った被災者が応急仮設住宅に入居し、災害公営住宅での生活を始めるところまでを学びましたが、ここでは、自宅の再建支援、被災者への見舞金など、主に経済的な面からの生活再建支援の仕組みについて紹介します。
1 住宅の再建支援(被災者生活再建支援法)
災害公営住宅には、主に住宅再建の見通しが立っていない被災者が入居しますが、被災者の中には、自宅を自力で再建する人も多くいます。
こうした自宅を自力で再建する被災者の経済的負担を軽減する制度が、「被災者生活再建支援制度」です。
(1) 被災者生活再建支援制度の制定経緯
我が国の災害法制では、災害で住宅を失った被災者に対しては、もともと、被災直後の滞在場所としての指定避難所の設置、その後の当面の住居としての応急仮設住宅の提供と、被災者向けの低廉で優良な住宅としての災害公営住宅の建設までの制度はありましたが、その後の個人の住宅の取得に対する公的支援はありませんでした。つまり、被災者の当面の生活が軌道に乗るまでが公助の範囲で、その後は個人の自助努力によるということでした。これは、私有財産の形成に該当する個人の住宅取得に公金が使われることに対する抵抗感が、行政側にあったことによるものと考えられます。
ところが、1995年1月に阪神・淡路大震災が発生し、兵庫県を中心に全国で約25万棟の家屋が全半壊となり、約46万世帯が被災し(1)、住居に窮する状態となりました。これに対して、当時は、住宅再建への支援は、国内外からの義援金のみで、その額は1,793億円で、当時としては戦後最高額でしたが、被災世帯があまりに多かったため、1世帯当たりにすると約40万円(2)程度で、他の自然災害(3)と比較しても配分額が極めて少額でした。そこで、神戸の生協(コープこうべ)が、積極的な被災者支援策を政府に対して求め、全国の生協とともに「地震災害等に対する国民的保障制度を求める署名推進運動」を開始し、全国で約2,400万人の署名を集め、兵庫県や全国知事会なども国に働きかけ、阪神・淡路大震災から3年を経過した1998年に議員立法で「被災者生活再建支援法」が制定されました(4)。
阪神・淡路大震災の被災者には適用されませんでしたが、この法律では、当初年収500万円以下の世帯に最高100万円を支援金として交付することとされ、個人の財産形成につながる災害支援が初めて制度化されたことになりました。その後、鳥取県西部地震における県独自の住宅復旧支援が行われたことなどもあり、支援額の増額や条件の緩和などが行われています。