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2020.12.25 議員活動

第8回 住居を失った被災者を支援する仕組み

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3 災害公営住宅を提供するに当たっての自治体の取組み
(1)災害公営住宅の法的な仕組み
 応急仮設住宅は供与期間が限られているため、被災者のうち、自力での住宅再建ができた人は再建された自宅に移り、自力再建を検討中又は未定の人が災害公営住宅に移ります。
 災害公営住宅は、法的には、公営住宅法に基づき自治体が整備するものであり、自治体が建設する通常の市町村営アパートなどと同様の基準で整備されます。ただ、入居に当たっては、通常の公営住宅では所得制限があり、一定以上の収入がある場合は入居できませんが、災害公営住宅については、住宅を失った被災者は入居することができます。また、家賃については、応急仮設住宅では無料でしたが、災害公営住宅では、減免されてはいますが、家賃が生じます。

(2)災害公営住宅の整備
 災害公営住宅の整備に当たっては、自治体では、①被災者に迅速に住宅を提供すること、②建設戸数や場所を適正に調整すること、③安全安心な立地場所の選定を行うこと、④コミュニティの形成に配慮すること、⑤高齢者、障害者等の入居に配慮することなどを中心に、このほか、地元の業者や資材の利用促進、環境等への配慮などが考慮されます。
 このため、東日本大震災の被災自治体では、上記の事項を具体的に実施していくため、復興住宅整備計画(宮城県)、災害公営住宅の整備に関する方針(岩手県)などが策定されました。
 このうち、①については、県と市町村が整備戸数を分担しながら建設したり、住宅の仕様を統一化した標準設計や建設工事の一括発注を導入するなどにより迅速に整備が行われる取組みをしています。②については、人口減少が進行していることを考慮し、過大な建設戸数とならないよう、基本的には被災者への意向調査などをもとに戸数や場所を決めていきます。また、③については、入居者が再び災害に遭うことがないよう、安全な場所を選定します。④、⑤についても、従前の地域コミュニティを考慮し、被災前の近隣世帯が同じ住宅団地に入居することができるよう調整をしたり、障害者等が優先して入居できる枠を設けるなどの対応を必要に応じてとることがあります。

(3)災害公営住宅に関わる課題
ア 応急仮設住宅からの円滑な移行(コミュニティの再生)
 災害公営住宅への入居は、通常、希望者の抽選により行われるので、仮設住宅から移ってきた入居者の多くは、当初は隣人同士が知り合いでない場合が通常です。したがって、再び住宅団地内のコミュニティをつくり直すこととなります。入居に際して、発災前の同じ町内単位などで入居できるよう配慮する場合もありますが、地域コミュニティを完全に発災前と同じようにすることは困難です。また、発災当初に比較して、生活支援をするNPOやボランティアも減少することから、円滑にコミュニティを再生するためには、自治体等による支援の取組みがますます重要となります。
イ 入居者の高齢化・孤独化
 災害公営住宅には、自宅再建等の計画を当面持っていない被災者が入居することとなります。そして、いったん入居した後に、自宅を再建した住民が徐々に退去していくので、最終的に、災害公営住宅には自宅を再建する見込みのない高齢者等が多く残ってしまう状況がみられます。これらの高齢者の中には、災害で家族を失い、心身を病む人も多く、また、災害公営住宅は、応急仮設住宅に比較して気密性が高く、敷地の関係で高層階となってしまうこともあり、住民が孤立化しやすく、孤独死等の問題が生じることがあります。
 そこで、応急仮設住宅でも行われていた自治体やNPOなどによる訪問や健康指導などの生活支援が継続して行われる必要があります。
ウ 家賃負担、入居要件特例の廃止
 災害公営住宅は、前述のように、通常の公営住宅と基本的に同様の位置付けとなっているため、特例として入居基準を緩和したり、家賃を減免して被災者が入居しているのが現状です。このため、発災後、時間が経過すると、家賃等の特例が徐々に撤廃されていきます。つまり、入居している被災者の家賃等の負担が増加していく仕組みになっています。高齢や障害等により収入を得る途(みち)がない被災者や災害で職を失い再就職できていない被災者などには、経済的負担が重くのしかかります。特例措置の期限延長も検討されていますが、不確定なところもあり、個々の被災者の事情に合わせた支援を考える必要があります。防災8-4

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