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2020.12.25 議会改革

第15回 住民と対話する

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5 どのような住民像に立つか

 住民参加の拡大・強化については、実際にはなかなか住民の側の関心が高まらず、参加者の固定化やプロ市民化などの問題を生じることも少なくなく、不信感を示す向きもある。確かに、住民自治のためには住民の幅広く積極的な参加が基本的な前提ともなるのであり、住民が受け身であるだけでは成り立たない。
 しかしながら、人々の価値観や生活が多様化している中で、すべての人にとって地域や自治の問題が最大の関心事であるとは限らず、また、大きな問題や不満が生じない限り参加の意欲をもたないことも多い。住民の受益者化や一体性の喪失が進んできていることからも目をそらすことはできない。そもそも、代表民主制がとられている以上、普段は、代表者に委ね、時々、代表者による議論や決定に目を向ける一方、自分に特に関係する問題や地域のあり方にかかわるような問題が生じた場合には代表者に任せるだけでなく直接にその決定過程にかかわるようにすることでもよいはずであり、自治だからといって、住民が常に能動的でなければならないわけではない。住民があらゆる地域の課題に関心をもち、主体的に態度を決定し、それによって妥当な結論が導き出されるという想定は、現実的でないだけでなく、望ましいことかどうかも議論のありうるところだろう。
 それらのことを無視して、能動的・積極的な住民像ばかりを強調しても、仕方がないのであり、展望が開けるわけでもない。
 他方、だからといって、その取組みや努力を諦めたり、止めてよいわけではない。議会としては、住民参加の機会をいかに拡大し、そこで示された意見をどう取り入れるかを考え続けていくことが必要である。
 その際には、参加をしなかったからといって、参加者以外の住民の意見や利害を軽視するような議論をすべきではない。声なき声や少数者の声にも耳を傾けるのが政治の役割である。その一方で、十分な根拠もなく多数の住民の意思や全体の利益を持ち出して、積極的に示された住民の意見に耳を傾けようとしないのも妥当とは言い難い。住民から示された意見の中には、恣意的・感情的なもの、党派性を帯びているもの、固定層によるものなどもあり、また、流されやすく気まぐれでもある。しかし、それをはじめから色眼鏡で見るようなことをするのではなく、できるだけ多様な意見を吸い上げ、最終的には議会の公開の場で調整・集約するのが政治の責任というものだろう。
 もとより、議員は、その基盤とする地域・コミュニティ・団体などが抱える問題やそのニーズを、機を逸することなく議会で取り上げることで、住民の不安や不満を吸収する役割を担っているのであり、議会で論じられることが地域社会の安定に寄与することにもつながりうる。そして、議論の上、最終的には、総合的・全体的な視点に立った判断をするのが建前となる。
 また、行政国家現象により拡大を続ける行政に対抗するためには、住民との結び付きを強化するほかないのであり、行政の側も住民参加を進めるのをにらみながら、それとの差別化が求められることになる。総合性や整合性が重視され画一化しがちな行政に対し、多様な意見や少数派の意見の吸い上げはその一つのカギとなりうるといえる。そして、行政の限界も露呈しつつある中で、議会が住民の代表機関としてしっかりと調整・決定の機能を果たすためにも、一方的に意見を聴く広聴型にとどまらず対話型へと転換していくことなども必要となってくる。民主主義のあり方として、公共の空間での国民・住民を巻き込んでの議論を重視する討議型民主主義も有力に主張され、実践する動きもある。
 いずれにしても、試行錯誤を繰り返し、様々な経験を積み重ね、いろいろと仕組みを整えつつ、住民とともに歩んでいくしかないのであり、それこそが議会の生きる道でもある。そこでは、地道で忍耐強く、かつ、持続的な取組み・努力が求められている。
 

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