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2020.12.25 議会改革

第15回 住民と対話する

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【コラム:住民投票にどう向き合うか】
 憲法や地方自治法などが規定する住民投票とは別に、近年、各地の自治体で行われてきたのが、住民投票実施条例に基づき、地域における重要な政策争点等をめぐり住民の意思を確認するための住民投票だ。いずれも拘束力をもたず結果の尊重を求めるにとどまる諮問型住民投票である(16)。この場合、議会は、条例の制定を通じ住民投票を行うかどうかの判断を迫られることになるほか、実施された場合には住民投票の結果に向き合うことになる。
 住民投票条例等に基づいて特定の政策をめぐって実施された住民投票としては、1996年の新潟県巻町での原子力発電所の建設をめぐる住民投票が最初のものであり、その後、各地で、原子力発電所、基地問題等、産業廃棄物処理施設、採石場、河川の可動堰(せき)、さらに市町村合併などをめぐり、住民投票が行われてきた。朝日新聞2015年6月7日GLOBE+160号によれば、それまでに412件の住民投票が実施され、そのうちの約9割が「平成の大合併」に伴う市町村合併に関するものであったという。
 他方、個別の課題に対するものだけでなく、常設型の住民投票条例も、2000年の高浜市住民投票条例以降、制定する自治体が増えており、自治基本条例、住民参加条例、まちづくり条例などの中で住民投票について規定している例も見られる。
 しかしその一方で、議員や長の提案により条例が制定されることもあるものの、住民投票に対する議会や長の拒否感は依然として強いものがあり(17)、住民投票条例の提案が議会において否決されることも少なくない。また、住民投票が実施されることになっても、最低投票率要件を設け、最低投票率要件に満たない場合には開票さえしないとすることもあり、2013年に行われた小平市の都道建設計画の見直しに関する住民投票(最低投票率要件50%)をはじめ、最低投票率に満たなかったとして開票されなかった例も見受けられる。
 住民投票は、代表民主制を補完するものといえるが、実施例が蓄積される中で、これを評価する議論がある一方、様々な問題点も指摘されるようになっている。例えば、基地問題など国政にかかわる問題のほか、2015年の所沢市の市立小中学校のエアコン設置住民投票のように、住民投票の対象とすることの是非が議論となったものや、長が住民投票の結果に従わず訴訟に持ち込まれた例(18)などもある。また、十分な情報提供や議論のないままに住民投票が行われたり、議会や長の責任放棄となったり、かえって社会的対立を激化させる(住民の分断)などのリスクもしばしば指摘されている。
 議会としては、最初からネガティブな見方をすべきではないが、その制度化や運用については十分な考慮が必要となるのであり、住民の意思を直接に問う必要がある場合には適切にその機会を設定するとともに、住民投票で示された意思をしっかりと受け止めて必要な判断をし、行動するようにしていくべきだろう。

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