2020.12.25 議会改革
第15回 住民と対話する
(2)傍聴者の議会での陳述
議会に赴き、傍聴する住民が、単に見聞きするだけでなく、議場での住民参加として、意見を述べる機会を設けるところも見られ、議会基本条例や会議規則の中でそれについて規定している議会もある。議会改革度調査2016によれば、本会議や委員会で傍聴者が直接発言する機会を設けている議会は2%であり、そのうちの48%が発言を会議録に残している。
住民よる議会演説制度を導入している議会もある。例えば、名古屋市議会では、市民の発言の機会の確保により議会への関心を高め、市民により身近で開かれた議会を目指して、要綱により「市民3分間議会演説制度」を導入しており、各定例会に1回、委員会室で行うものとされ、発言者数の定員は7人(希望者多数の場合は抽選)で、発言時間は1人3分以内で実施している(ただし、記録等は作成せず)。また、長崎県小値賀町議会のように「模擬公聴会」と称して、一般質問の終了後に、一般質問に関して傍聴者が自由に意見表明を行う場・時間を設定するところもあるほか(会議録不掲載)、高校生などによる模擬議会で取りまとめた提案を議会が受け取り検討するといった試みを行う議会もある。
(3)パブリックコメント
条例案や政策原案の作成にあたり行われるパブリックコメントは、自治における標準装備化してきており、議会においても、実施要領などを定め、議員又は委員会の提出による条例の制定や、政策提言などを行う場合に、パブリックコメントを実施しているところが少なくない。
その手続としては、議会において原案を作成した段階でホームページや公報などを通じてその趣旨・目的等を明らかにしつつ原案を公表し、住民(住民だけでなく、区域内に勤務・在学している者、事務所・事業所のある個人や法人・団体なども募集対象とされることも多い)からの意見を募集。意見の受付けは持参、郵送、ファックス、メールなどの方法で行われ、提出された意見については検討がなされた上で、その結果が公表されるが、その際には、提出された意見の概要とそれに対する議会の考えが示されることになる。
パブリックコメントは、情報の事前公開と住民の意見の反映ということでは重要な意味をもつものであるが、形式化したりアリバイづくりに利用されているといった指摘もある。
(4)議会モニター・サポーター
住民が議会の活動や運営などに助言をしたり、政策づくりにかかわったりするものとして、議会モニター・アドバイザーや議会サポーターの制度を導入する議会も増えつつある(15)。その内容、やり方は様々であるが、例えば、本会議及び委員会等の傍聴、議会報告会の参加を通じてその会議の運営や、議会だより(議会広報)、ホームページ等に関する意見を提出してもらい、提出された意見については一定期間ごとに取りまとめて公表するとともに、担当委員会の意見を聴き一定期間内に検討結果を公表するといった取組みなどが行われている。
注目されるのは、長野県飯綱町議会の議会サポーターの取組みである。同議会では、議会の政策立案能力を向上させ、長に政策提案のできる議会力・議員力の向上や議会と住民との協働による政策づくりを目指すと同時に、住民が政策サポーターとして政策的議論に参加することを通じて議会活動に関心をもち、その中から議員のなり手が出てくることも期待し、制度を創設。政策サポーターは議会及び町の政策について意見を提言する任務を担うものとされ、具体的には、議会がテーマを決定・公表した上でその選任(定数20人以内で、公募又は議員推薦の者の中から議長が委嘱。町内在住かどうかを問わない)を行い、政策サポーターは、政策サポーター会議で議員と議論を重ね、提言書をまとめ町長に提出するほか、議会の依頼に応じて会議、アンケート、調査事項への協力なども行う。これまでに、政策サポーター会議の提言を受け議員提案により集落振興支援基本条例が制定されたほか、町議会議員選挙で政策サポーターの中から新人2人が立候補し当選するといった成果もあったという。