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2020.12.25 議会改革

第15回 住民と対話する

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4 議会への住民参加

 議会に直接住民が参加することを進めることも重要である。大事なのは、住民を巻き込んだ形で議論を展開するようにしていくことであり、そのための工夫や努力の手間を惜しむべきではない。さらに、住民と対話した結果については政策に結び付けるような仕組みづくりも必要である。他方、住民との対話だけでなく、相互補完の関係に立つことも必要であり、議員の側が住民活動を支援し、住民の相談役・知恵袋となると同時に、議会の側に不足する知見などを住民に補ってもらうようなこと(住民の知見の導入)も必要となってくるのではないかと思われる。
 議会内における住民参加の制度としては、次のようなものがあり、これらをうまく活用していくことが求められる。

(1)公聴会・参考人
 審議の過程において、議案の提出者の主張や説明だけでなく、利害関係者や学識経験者などの第三者の意見を聴くことは、その必要性や合理性を吟味する上で必要な情報を得る機会となり、審議に客観性をもたせることにもつながりうる。また、審議に住民の多様な意見を反映することはその本来的な目的・役割とすべきものであって、住民の意見を直接に聴く手続なども必要となる。そして、そのための制度として定められているのが、公聴会と参考人であり、委員会だけでなく、本会議においても、予算その他の重要な議案、請願等について公聴会を開き、利害関係者や学識経験者等から意見を聴いたり、審査・調査のため参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる(地方自治法115条の2・109条5項)。
 もっとも、公聴会も参考人も、その利用は低調なようである。総務省の調査(地方自治月報59号)によれば、2016年4月1日から2018年3月31日までの間に公聴会を開催したのは6市町村・7件にとどまっており、参考人の招致については、都道府県では2016年4月1日~2017年3月31日が172件、2017年4月1日~2018年3月31日が164件、市町村では2016年4月1日~2017年3月31日が190団体566件、2017年4月1日~2018年3月31日が182団体499件となっている。
 公聴会の制度は、常任委員会の制度とともに、アメリカ連邦議会におけるpublic hearingを参考にして、国会のほか、自治体議会にも導入されたものであるが、日本での公聴会の位置付けや機能は、公聴会が審議の中心的な手続となっているアメリカ連邦議会の場合とではかなり様相を異にする。すなわち、大統領制と厳格な権力分立を採用するアメリカでは、執政府の議会への出席は当然に認められず、執政府から説明を聴く必要がある場合には一般の学識経験者や利害関係者と同じように公聴会の手続により議会への出席と説明を求めることになる。これに対し、日本では、議院内閣制を採用する国会だけでなく、自治体議会の場合にも執行機関の側が委員会・本会議の審議に出席できることになっており、公聴会はあくまでも広く国民や住民の意見を聴くものとなっている。加えて、公聴会の開催までには、議長の承認、必要事項の公示、公述人の公募と選定など多くの手続と時間を必要とするため、自治体議会においては、会期が短い場合には時間的に開催することが容易でなく、開催経験も少なくその開催に慣れていないことなども相まって、あまり活用されていないのが実態である。
 他方、参考人は、自治体議会では慣行として行われてきたところ、1991年に法制化されたもので、一般に、その事案の審査・調査に寄与する意見を述べることができる者が参考人として招致されることになる。参考人の制度は、手続が簡便で、意見を聴きたい人を特定でき、幅広く意見を聴くことができることを特徴とするが、自治体議会においては、実際には、それほど活用されているわけではなく、また、形式的なものとなっていることも少なくない。特に、その人選について各会派が推薦を行う場合には、どうしても議案に対する会派の考え・態度と同じ立場の者を推薦することになり、参考人の意見陳述が結果として推薦した会派の意見や立場を代弁・支持するものとなっているところがあることは否めない。
 

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