2020.12.25 議会改革
第15回 住民と対話する
3 住民からの提案等をどう活かすか
地方自治においては、住民が直接に提案を行う制度がいくつか設けられているほか、議会が独自に工夫しているものもある。議会としては、住民からの自由な政策提案をいかに受け入れ、形にしていくかが問われることになるが、現実には、それを活かすような取組みができていないことが少なくない。
(1)直接請求の受け止め方
住民からの直接の提案制度ということでは、条例の制定改廃の請求がある。
条例の制定改廃請求は、有権者の50分の1以上の署名を得て、代表者から長に対してなされ、長は、それに意見を付して、議会に付議することになる。請求には条例案が添付されることが必要とされている。
これは、イニシアティブとも呼ばれているが、あくまでも議会が審議・決定するものである(5)。それだけに、議会は、住民からの貴重な提案として、受け止めるべきものといえる。
しかしながら、現実には、議会として取り組んでこなかった問題への提案に対する反発・拒否感、市民運動に対する根強いアレルギー、請求が党派性を帯びる場合も少なくないことなどもあってなのか、条例の制定改廃請求については、議会も長もネガティブな反応をすることが少なくない。2014年4月1日から2018年3月31日までに市町村であった条例の制定改廃請求で議会に付議された請求63件のうち、可決されたものは5件(修正可決4件・可決1件)となっている(表1)。
そのような姿勢は、かつて住民自治の強化策として、条例の制定改廃請求の対象外とされている地方税の賦課徴収や分担金・使用料・手数料の徴収の対象追加が検討された際に、自治体側の反対により法律改正に盛り込まれるには至らなかったことにも、現れているようにも思われる(6)。
住民からの条例の制定改廃請求については、議会としてしっかりと検討を行うことが前提とされており、議会は、その審議を行うにあたっては、代表者に意見を述べる機会を与えなければならず、また、その条例案の可決・修正可決・否決のいずれも可能だが、審議未了とすることはできず、必ず結論を出す必要がある。実際に審議未了となった場合には、長は、議会が議決するまで提案しなければならず、その結果を代表者に通知するとともに、公表することが義務付けられている。議会としては、きちんと公開の場で議論を行い、仮に否決するのであれば何が問題なのかを明らかにすべきだろう。また、それをそのまま受け入れられない場合でも、それを契機として、議会として独自に検討を始めるようなこともあってよいのではないだろうか。