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特集 介護とICT

2020.12.25 ICT活用・DX

介護のICT化におけるメリットと導入事例

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7 様々なデジタル化のメリット

 具体的な事例を見ていくことで、デジタル化のメリットを実感していただけたかと思いますが、以下で、整理していきましょう。
 まずは、「業務の効率化」です。高齢化が進む中、介護を必要とする人は急増しています。一方で、介護業界で働く人材の数は十分ではなく、介護人材のひっ迫は、喫緊の課題でもあります。デジタル化は、業務の効率化に大きく貢献していくものとなっています。
 第2に、「高レベル人材の育成」です。特に、ベテランの経験やノウハウをAIが学習することで、経験やスキルが不足している人材が業務を行う際の支援を行うことが可能になってきています。ICTツールによる支援を受けながら業務を行うことで、質の高いケアを行える高レベルの人材育成につながるなど、新しい効果も生まれてきています。
 第3に、「多職種連携の推進」です。地域包括ケアの導入により必須となった多職種連携をスムーズに進めることは、ICTが得意とするところです。同じ情報を共有できるプラットフォームを利用することで、迅速かつ適切なケアにつなげることができるはずです。
 第4に、「個別化されたケアの提供」です。医療の現場でも、介護の現場でも、患者や利用者の膨大な量の情報が日々蓄積されていますが、これらのデータを分析することで、様々な面で質の向上につなげることが可能となります。センサー等のIoTにより、従来では取得できなかった日常のデータも取得しやすくなっており、AI技術はより深い分析が可能となってきています。技術の発展は、自分自身の状態に合った個別化ケアにつながっていくものと思われます。
 最後は、「透明性とコンセンサスの醸成」です。デジタル化は、様々な情報を「見える化」していきます。誰がどのデータにアクセスしたかも管理でき、情報保護の面でも透明性を高めます。上述したスマートフロアを導入した高齢者施設では、当初、スタッフの間でも導入に好意的でない人々もいたそうです。あるとき、亡くなられた入居者の家族から「夜間の見回りがなかったことで処置が遅れ、死亡に至ったのではないか」という疑義を持たれたケースがありました。しかし、スマートフロアのデータを確認すると、担当する看護士が夜間に部屋を訪れ、ベッドサイドに一定時間いたことをデータから明らかにすることができました。担当スタッフの疑いも晴れ、家族も納得することができたそうです。これにより、スマートフロアは、入居者のためだけでなく、スタッフにとっても重要なツールであることを認識してもらうきっかけになりました。「見える化」により、関係者間のコンセンサス醸成にもつなげていくことができるでしょう。

8 介護のデジタル化を加速するために

 介護分野のデジタル化には多くのメリットがありますが、導入のスピードは速くはありません。導入費用など課題は種々ありますが、大きなポイントは、本当に現場に合ったデジタル化が行えているかという点です。AIが搭載された人型ロボットが発売された際に、様々な場所で導入されましたが、現在は、施設の入り口でうなだれている姿を見ることが多くなっています。どんなに良い製品・サービスであっても、それを実装してもらうには、「これを使わないと困る」というものにしていかなくてはいけません。そのためには、通常業務のワークフローに入れ込んでいくことが重要になります。現場の業務をよく知っているキーパーソンから聞き取りを行い、誰が、どのような業務を、どのように行っているかを分析し、業務のフローチャートにICTをきちんと入れ込むことが、真のデジタル化につながるといえるでしょう。

(1) https://publicadministration.un.org/egovkb/en-us/Reports/UN-E-Government-Survey-2020
(2) https://en.digst.dk/
(3) https://en.digst.dk/about-us/organisation/

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