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特集 介護とICT

2020.12.10 ICT活用・DX

介護現場におけるICT導入・活用の現状と課題

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4 介護現場におけるITC導入・活用のためのマネジメント課題と対応

 厚生労働省「居宅サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引きVer.1.1」では、介護現場で求められるICT機能とICT選定のポイントを以下のとおり指摘しています。

(1)介護現場で求められるICT機能
 介護現場で求められるICT機能は、事業所内業務や地域包括ケアシステムを含む事業者間業務により分かれます。
ア 事業所内業務に求められるICT機能
 介護現場の事業所内業務で求められるICT機能について、以下、訪問介護現場分野で求められる機能を例示します。
① システム管理機能
 これは、セキュリティ設定、アカウント設定、操作ログ確認等を行う機能で、主なユーザーは管理者・サービス提供責任者です。
② シフト表作成機能
 これは、ヘルパーのシフト表の自動作成機能で、主なユーザーは管理者・サービス提供責任者です。
③ 基本情報作成機能
 これは、利用者情報の登録・参照・更新・削除を行う機能で、主なユーザーはサービス提供責任者・介護職員です。
④ 計画書作成機能
 これは、訪問介護計画の登録・参照・更新・削除、サービス提供票の登録・参照・更新・削除、サービス提供票の取り込みを行う機能で、主なユーザーはサービス提供責任者・介護職員です。
⑤ 記録作成機能
 これは、介護記録の登録・参照・更新・削除、介護記録の集計・分析、介護記録の外部データへの出力、業務日誌の登録・参照・更新・削除、連絡帳の登録・参照・更新・削除、申し送りを行う機能が求められ、主なユーザーはサービス提供責任者・介護職員です。
⑥ 実績化機能
 これは、各種記録と報酬請求情報の突合を行う機能で、主なユーザーはサービス提供責任者・事務職員です。
⑦ 請求管理機能
 これは、事業所の加算・減算の管理、算定処理、集計処理、利用者負担の請求などを行う機能で、主なユーザーはサービス提供責任者・事務職員です。
⑧ 介護報酬請求機能
 これは、各地区国保連合会への報酬請求時に確認を行う機能で、主なユーザーはサービス提供責任者・事務職員です。
イ 事業所間業務に求められるICT機能
 介護現場の事業所間業務で求められるICT機能について、以下、地域包括ケアシステムで求められる機能を例示します。
① ケアプラン提供機能
 これは、要介護者が医師・歯科医師を受診する際、利用者の基本情報、家族・住宅情報、生活機能・介護情報を提供する機能で、ユーザーはケアマネジャーです。ただし、この機能は、ケアマネジャーが医師・歯科医師へFAX等により情報提供している場合が多く見られるのが現状です。
② 看護計画・看護記録提供機能
 これは、訪問看護等の利用者が医師や歯科医師を受診する際、利用者の基本情報、家族・住宅情報、医療情報を提供する機能で、ユーザーは訪問看護師です。
③ 療養計画・診療記録提供機能
 これは、医師・歯科医師による診療等の利用者が訪問看護を利用する際、利用者の基本情報、医療情報を提供する機能で、ユーザーは医師・歯科医師です。
④ 診療情報提供機能
 これは、介護施設サービス等の利用者が病院を受診する際、利用者の基本情報、医療情報を提供する機能で、ユーザーは医師・薬剤師等です。
 なお、地域包括ケアシステムは、参画している事業所間や医療機関等との相互接続基盤構築、相互接続ルール、相互接続によるデータ交換、安全な通信を実現するためのセキュリティ確保等の運用ルールの確立等が課題となっています。

(2)介護現場におけるICT選定ポイント
ア ICT機器・ソフトウェア製品の機能
 ICT機器・ソフトウェア製品の機能は様々であり、自法人(自事業所)のICT導入目的や業務フローの見直しに基づいて、必要になる機能の選択が求められます。
 必要な機能を選定した後で、候補となっているICT機器・ソフトウェア製品における必要な機能の網羅性について比較・確認します。
 機能の比較の際は、「機能の有無」だけでなく、画面に表示されている情報の見やすさ、データ登録や参照の方法が直感的に理解できるか等の「操作のしやすさ」の視点も考慮する必要があります。
イ ICT機器・ソフトウェア製品の導入効果
 ICT機器・ソフトウェア製品の機能は、必ずしも全ての法人(事業所)に必要とは限りません。各法人(各事業所)のICT導入パターンにより、その時点で必要な機能は異なります。
 したがって、ICT導入計画作成時に、ICT機器・ソフトウェア製品の導入により、どのような効果を得ることを目指すのかを整理した上で、各法人(各事業所)の目的や職員のスキルに合ったものを選ぶことが重要です。
ウ ICT機器・ソフトウェア製品の価格体系
 ICT機器・ソフトウェア製品の価格体系も様々です。例えば、毎月定額を支払って利用する製品もあれば、複数年間分の利用料を一括で支払って利用する製品もあります。また、利用料の中に介護保険制度改正に対応するための保守費用等が含まれている製品もあれば、保守については別途設定されている製品もあります。そのため、候補としている製品については、機能と同様に価格体系についても比較・確認することがポイントです。
 主な比較・確認の視点としては、「支払額の観点(初期費用/毎月の支払額/一定期間内の支払総額)」、「価格に含まれている範囲の観点(利用料/保守料/サポート料等)」が挙げられます。また、契約期間中の解約料の有無等の解約しやすさの観点も重要です。
エ ICT機器・ソフトウェア製品のサポート・メンテナンス
 ICT機器・ソフトウェア製品の導入がうまくいき、継続的に利用するようになっても、日々の業務の中では様々な問題が発生することがあります。例えば、「ICT機器が故障した」、「誤ってデータを消去してしまった」、「ソフトウェアを利用するためのパスワードが分からなくなってしまった」等です。そのため、ICT機器・ソフトウェア製品の提供ベンダーによるサポートサービスの比較・確認が必要です。また、ソフトウェア製品は定期的に機能改善が行われることが一般的で、介護保険制度は定期的に見直しがなされるため、ソフトウェア製品は制度改正に合わせた機能変更が行われます。そのため、ICT機器・ソフトウェア製品の提供ベンダーによるメンテナンスメニューについても比較・確認が求められます。
 さらに、導入したICT機器・ソフトウェア製品を使い続けるとは限らず、より良い製品があれば、いずれ乗り換えることも想定しておく必要があります。そのため、サポート・メンテナンスメニューを確認する際には、他の製品に変更する際のデータの引き継ぎの容易さについても確認することがポイントです。

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