2020.12.10 議員活動
第3回 情報共有・市民参加と議会
6 市民参加と求められる実効性
市民は選挙を通じて議会や首長に自治体政府の運営を託している。しかし、地域の課題とその解決の方策について、選挙だけで市民の意思を確認することは困難である。選挙から時がたつことで、新たな課題の発生、取り巻く環境の変化、市民意識の変化が生ずることもある。選挙区と課題発生区域の相違もある。そもそもすべての政策に賛成し投票できることは稀(まれ)であるという課題もある。このような「選挙の限界」を補うためには「市民参加」が必要である。
これまで市民参加は、様々な手法により展開されてきた。そして、その取組みは議会でも行政でも行われてきた。しかし、参加機会の周知が丁寧でない、出された意見はただ聞き流される、方針は決定済みなど、アリバイ参加との批判の声がいまだ聞かれる。そこには、市民参加を実質的に機能させるための方策が求められ続けている。
パブリックコメント手続を例にとれば、意思決定手続の早い時期に案件説明や意見交換の場を設け、多様な意見を誘発するための方策が必要である。パブリックコメント手続で意見が出ていない場合、パブリックコメント手続実施者は、情報共有・市民参加の取組みが不足していたのではないか自らを問わねばならない。自治体議会も行政の情報共有・市民参加の取組みが適切であったかを評価する仕組みをつくったり、議会の取組みが適切であったかを評価する仕組みをつくり、運用することが必要である。
7 情報共有・市民参加の特性と実施時期
自治体政府の政策過程における情報共有・市民参加の仕組みは、仕組みごとに様々な特性や望ましい実施時期を持つ。
仕組みの特性については、広範性(実質的に市民がどれだけ広範に参加できるか)、全方向性(参加を求める側と参加する側の間、ないしは参加者間における双方向を含む全方向性のコミュニケーションが確保されているか)、密着性(参加を求める側と参加する側の間、ないしは参加者相互間における親密性があるか)、包み込まれない度合い(参加者ないし本来中立であるべきコーディネーター、ファシリテーターなどの立場にあるものが議会や行政など参加を求める側に包み込まれないか(取り込まれないか)の視点で評価することができる。
また、実施時期についても、課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価という各政策過程において望ましい実施時期がある。そして、どの仕組みにも一長一短がある。したがって、その課題を超克するためには情報共有・市民参加の手法を複数回行うことが必要となる。