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2020.11.25 議会改革

第14回 長とどう向き合うか

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6 長との向き合い方と間合いの取り方

 議院内閣制とは異なり、首長制においては、与党といった存在は必然的なものとはいえない。議会の側の対応は是々非々となるかもしれないが、与党会派がなくても、予算や条例を成立させ、行政を行っていくことは可能である。
 ただ、そうはいっても、現実には、予算や条例をスムーズに成立させるためには、与党会派といったものがある方が無難であり、長が一定の会派とそのような関係を構築しようとするのも無理からぬところがある。また、与党会派となれば、必要な情報を事前に手に入れたり、その要望をある程度取り入れてもらったりすることなども可能となる。事前の根回しの対象となったり行政に影響力を行使できたりすることは、政治家として魅力的に映ることも確かだろう。
 しかし、議会における与党会派が多数を占めることになれば、その与党会派のスタンスや対応が議会の審議・機能に大きな影響を及ぼすことになる。いわゆる総与党化といったものが生じた場合には、議会の役割が全般的に形骸化してしまうことにもなりかねない。
 与党会派の存在を認めざるをえないとしても、議会の審議を重視し、そこでは柔軟な姿勢・対応をとることが求められるのであり、与党会派とはいえ、議会の審議の場に多様な住民の意見を反映するとともに、住民の納得を得る努力を怠るべきではない。自治体議会においては、与党会派が複数会派によって構成されることが多いが、その場合には、政策によって支持の色合いが異なることがあってもよいはずであり、政策に応じ支持会派の入替え(部分連合的対応)といったこともありうるのではないかと思われる。そして、与党会派が多数となる場合には、とりわけ野党会派の役割が大事となるのであり、数の論理に陥ることなく、野党会派ないし少数派の発言などの機会がしっかりと確保されるべきである。
 他方、議会と長が政治的に対立し、それが激化することになると、議案の否決や専決処分の濫発などといった事態を招き、自治や行政を混乱させることになりかねない。時に両者が対立することは、適度の緊張関係をもたらすことになり、また、両者の対立を住民の判断により解消するというのも、住民自治を実現していく上ではそれなりに意味があることとはいえ、やはり、議会と長が激しく対立し、不正常な状況が続いたり、法や政治道徳に照らし許されないような行為・事態が生じることは、政治に対する不信を高めることになるだけであって、避けるべきである。住民の判断が、現実には最終決着とはならないこともあり、逆に住民の分断につながりかねないこともありうる。
 長の側は、その強い権限・立場を背景に、議会が協調的・追認的な姿勢をとる限りは一定の配慮を行うものの、両者の間での緊張が高まり、政治的対立が高じた場合には、議会を軽視・無視しがちとなる一方で、議会の側も、意図的にサボタージュや否決をして、長の側をけん制し追い込もうとしがちとなる。政治闘争とはいえ、法治国家・民主国家にはほど遠いと思わせかねないような、理性的・建設的とは言い難い振る舞いや不毛な応酬は、自治の能力を疑わせることにもなりかねない(13)
 独任制である長が選挙で選ばれるというのは民意の集約の方向に働くのに対し、多数の議員で構成される議会の選挙は多様な民意の反映の方向に働くことになり、そのような選挙の意義や方法の相違のほか、時期が異なることは、反映される民意にズレを生じうることにもなる。それらをうまく生かしつつ、適度の緊張感を伴った協働関係を構築・維持していくことが理想である。民主的で公正な自治行政を実現していく上では、議会が協賛機関化することも、厳しい分割政府状態となることも、適切ではない。分割政府となっても、長はとりあえず行政を進める手段を与えられているが、それに頼りすぎれば、より対立を高じさせ、様々な混乱や問題を自治や行政にもたらすことになりかねないことも理解される必要がある。
 議会としては、長と対立すれば抵抗勢力と批判され、長と協調すれば追認機関と呼ばれるなど、その立ち位置はなかなか難しいところがあるが、状況に応じつつ、うまく間合いをとっていくことが大事というほかない。そこには、優れたモデルや正解といったものが存在するわけではないのである。
 

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