2020.11.25 議員活動
第7回 災害廃棄物の処理とハード施設の復旧
3 住民参加による復旧
「多重防災型」のまちづくりでは、地域の自主防災組織や防災教育の面での住民の参加が不可欠ですが、ハードの面でも住民参加が重要になっています。
すなわち、「多重防災型」のまちづくりでは、あらゆる災害に耐えうるまでのハード整備をしない前提である以上、住民がその整備内容に納得することが必要です。住民がどの程度のハード施設で許容するかを住民と行政が十分に話し合うことが大切です。
東日本大震災における防潮堤の高さを決める際にも、一応、国土交通省のガイドラインをもとに県が防潮堤の高さの案を示し、住民説明会などで説明をした上でその高さを決めています。
4 地域鉄道交通の復旧
災害により被害を受けたハード施設のうち、地域交通を担う鉄道、中でもローカル線の復旧は、地域住民の生活の利便性の確保のみならず、地域コミュニティの維持、ひいては地域全体の復興や被災者を元気づけることにもつながり、多面的な効果があると考えられます。
この意味では、被災したローカル線の復旧は、同様に地域の交通手段としての役割を果たす道路の復旧に比べても、大きな意味があり、特に被災地が都市部でない場合は、より大きな意味があるといえます。
岩手県沿岸を走る第三セクターのローカル線・三陸鉄道は、東日本大震災により当時の営業区間107.6キロメートルのうちの3分の2が被災し、被災した施設設備は317か所に及び、全線運行不能、車両3両が床下まで浸水し走行不能となりましたが、震災から3年後の2014年4月に全線復旧しました。
当時の社長・望月正彦氏によると、「当初は、廃止も検討されたが、鉄道が廃止されて栄えた町はない。鉄道は、観光等で地域振興に貢献できる。高校生や高齢者の貴重な生活の足として重要であり、何よりも、もともと交通の不便だった被災地においては、第三セクター鉄道への地域住民のマイレール意識が高い、などの思いから復旧を決意し、震災後5日目には一部区間での運行を再開させた」ということです。その後、三陸鉄道は、JR東日本が運行していた旧山田線の移管も受け、第三セクター鉄道としては、全国最長の163キロメートルを運行する鉄道となりましたが、2019年10月の台風19号による風水害で再び被災し、一部運行不能となりました。しかし、翌2020年3月には全線で営業を再開しています。
一方、熊本県の球磨地方を走る第三セクター「くま川鉄道」は、2020年7月の令和2年7月豪雨で被災し全線で運休していますが、復旧費に対する国の手厚い財政支援(4)はあるものの、復旧には3〜4年かかり、その後の営業赤字への自治体の財政負担もあることから、地元では様々な議論があるとのことです(5)。
人口減少が進む過疎地が被災した場合に、第三セクター鉄道の復旧については、通常のハード施設とは異なり、地域の将来の振興策も含めた復興全体に関わる課題があります。被災した鉄道会社のみならず、自治体、住民も含めた広範な議論をし、地域の理解を得る必要があります。