2020.11.25 議員活動
第7回 災害廃棄物の処理とハード施設の復旧
第14講 ハード施設の復旧
災害の発生後、被災した道路、堤防、防潮堤、港湾施設などの公共土木施設の復旧は、地域住民の安全・安心を確保する上で早急に着手する必要がありますが、単に被災前と同様の施設に復旧するだけではなく、次のような点に留意して進める必要があります。
1 早期の応急復旧
災害直後の被災地では、被災者の安全・安心を確保するために、破損した道路、堤防、防潮堤などの公共土木施設や、電気や上下水道などのライフラインを早期に応急復旧することが必要です。応急復旧の内容は、例えば土砂崩れなどの場合、道路上の土砂の撤去や崩れた道路の埋戻し、法面(のりめん)の崩壊防止、河川氾濫や津波の場合は、浸水区域の排水や破堤した堤防、防潮堤の補修などですが、二次災害を防止するために早期に完了させることが求められます。
これらの公共土木施設の応急復旧については、基本的にはそれぞれの管理者が実施することになりますが、大規模な災害では、被災状況の把握や応急工事の業者への要請、重機や資材の調達などの業務が集中し、被災自治体の技術系職員だけではマンパワー不足になります。そのため、国土交通省の緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)や他の自治体からの技術者の派遣、業者団体との協定に基づく重機や資材の提供、作業員の派遣などにより、復旧作業に支障が生じないよう支援が行われます。
2 多重防災型の復旧
災害直後の応急復旧が完了すると、自治体では、破損した公共土木施設の本格復旧に着手しますが、これまで国内で発生している地震災害や、温暖化に起因する巨大台風による風水害などを見ると、従来の災害想定と同様の復旧では、住民の生命・財産を確実に守ることは難しくなってきています。実際、東日本大震災では、「万里の長城」ともいわれた岩手県宮古市田老地区の高さ10メートルの二重の防潮堤を津波が越えて甚大な被害をもたらしました。そのほか近年の台風水害では、各地で想定を超える雨量のため河川堤防が決壊し、広範囲の浸水が発生しています。
あらゆる災害を想定してハード施設を整備することは、理論上は可能ですが、厳しい財政状況のもとでは一定の限界があります。そこで、ある程度の頻度で発生する災害に対しては、耐えることができるハード整備を確実に行い、まれにしか発生しない低頻度の巨大災害に対しては、住民の防災教育や避難場所の確保などのソフトの施策を含めた「減災」の発想に基づく「多重防災型」のまちづくりを行うことが重要になってきています。
東日本大震災の被災地での防潮堤の復旧などでも、この発想が取り入れられています。例えば、岩手県の陸前高田市では、防潮堤の高さは、東日本大震災のような千年に一度の確率で発生する巨大災害ではなく、数十年〜百数十年に一度の比較的発生頻度の高い津波を想定した高さを基本として復旧整備し、発生頻度の低い巨大な津波に対しては、市街地全体を震災前よりも山手の位置に移し、10メートル以上かさ上げするなどにより、津波の到達時間を延ばすとともに、市街地から山手に延びる道路を避難路として整備し、住民に対しても防災教育を徹底することにより、生命を守ることを最優先とするまちづくりをしています。
このようなハードとソフトの組み合わせによる多重防災に基づく「減災」の発想は、2014年の国土強靭化基本法(3)に反映され、一般な考え方として普及してきていますが、ソフト施策の部分については、自治体や地域により温度差があります。