地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2020.11.25 議員活動

第7回 災害廃棄物の処理とハード施設の復旧

LINEで送る

4 災害廃棄物の処理プロセス
 膨大な災害廃棄物を迅速かつ適正に処理するために、自治体では次のようなプロセスで処理を行います。

(1)災害廃棄物処理実行計画の策定
 膨大な災害廃棄物を効率的に処理するためには、廃棄物処理のための計画として災害廃棄物処理実行計画を策定することが必要です。
 東日本大震災の際には、津波による土砂混じりの膨大な災害廃棄物が発生し、救助活動や被災地の復旧・復興の大きな支障となりました。そこで、国は、発災後2か月の2011年5月に、主に岩手、宮城、福島の被災3県の災害廃棄物の処理に関する「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針」(以下「マスタープラン」という)を策定し、発災後3年の2014年3月までに災害廃棄物を処理するという方針を明らかにしました。また、これを受けて、県も実行計画を策定し、被災市町村等が廃棄物処理を実施する体制を整備しました。
 国のマスタープランには、処理の期限のほかに、①国、県、市町村による処理推進体制、②処理に関する財政措置、③処理方法、④処理スケジュールなどが定められていました。
 これらのうち、①については、県がマスタープランに基づき「災害廃棄物処理実行計画」を定めるべきことや、状況により市町村から廃棄物処理の事務委託を受けて実施することなどが定められました。②については、国が全面的に財政面の支援をすること、③については、廃棄物の種別によりリサイクル処理すべきことや被災地以外の自治体での処理も含めた広域処理を検討すべきことなどが定められました。また、④についても、最終的な処理期限を2014年3月としつつ、住民の生活環境上の支障を除去する観点から、住居付近の災害廃棄物の撤去移動を、発災後5か月の2011年8月までにおおむね完了するスケジュールを示し、進捗管理の目安としています。
 ここでは、巨大災害に際して、まず国が災害廃棄物の処理期限を明示し、処理に対する自治体の財政負担が生じない方針を早期に示した点が、被災自治体の取組みを後押ししたといえます。
 県では、国のマスタープランに沿って、県と関係市町村等で構成する協議会で「災害廃棄物処理実行計画」を策定し、災害廃棄物の処理を効率的に実施する仕組みをつくりました。震災の3か月後に策定された岩手県の「災害廃棄物処理実行計画」によると、①災害廃棄物の仮置場の状況等から災害廃棄物全体の量や種類を推計し処理スケジュールの見通しを示した上で震災後の3年で処理を完了すること、②廃棄物の種類ごとに具体の処理方法を定め、できるだけ分別しリサイクルに回すこと、③被災自治体以外の県内外の処理施設を利用した広域処理により早期の処理完了を目指すこと、④廃棄物の分別等の過程で被災者を雇用するなどの配慮をすること、などが定められました。また、市町村ごとにも、さらに詳細な計画が定められ、計画的、効率的な処理を進める体制を整備しました。
 このような巨大災害時に国が大まかな処理方針を示し、自治体が国の方針に基づき処理の実行計画を定め計画的に災害廃棄物の処理を進める一方、自治体は平時から災害廃棄物の仮置場等を指定するなどの処理体制の方針を「廃棄物処理計画」として定める仕組みは、東日本大震災後の2016年の災害対策基本法及び廃棄物処理法の改正にも盛り込まれました。しかし、この改正法による国の方針は、東日本大震災や発生が懸念される南海トラフ地震・首都直下地震級の巨大災害を想定したもので、熊本地震や令和元年7月豪雨(2019年の西日本豪雨)などでは示されませんでした。このような状況では、比較的発生頻度の高い大規模災害時の災害廃棄物については、実質的に都道府県がマスタープランのような計画を策定するなどの仕組みが必要でしょう。
 

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る