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2020.11.10 議会運営

第74回 一般質問における除斥について/外交問題に関する意見書の提出

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明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

一般質問における除斥について

Q定例会の一般質問においてA議員が公の施設に関する指定管理について質問を行う旨の通告をしたが、この際、当該議会のB議員が代表取締役を務める法人が指定管理者となっていた場合、B議員は除斥すべきか。

A除斥とは、議員が特別職の地方公務員という立場であることに鑑み、議会における審議において中立公平性を特に強く求められることから、議員の自己又は二親等以内の血族、配偶者の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件に関しては、公正な判断を下し難いこと、又は公正な判断を下したとしても、中立公平性を害するおそれがあると考えられることから、当該議員を議会の審議から除外し、他の議員の判断に委ねることが適当であるという趣旨から定められた制度である。地方自治法(以下「自治法」という)117条に根拠規定が存在する。

【自治法117条】〔議長及び議員の除斥〕
普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができない。但し、議会の同意があったときは、会議に出席し、発言することができる。

 なお、議員が除斥に該当するとされた事件については、その議事に参与することができないとされており、この意味するところは単に当該事件の採決においてのみ審議に参画できないだけでなく、当該事件が議題になった後から採決が終了するまでの議事に参画することができないことを意味する。
 ここで、本問においては、一般質問において指定管理に係る質問をするに当たり、議員が指定管理者となっている場合に、自己の従事する業務に直接の利害関係のある事件として除斥の対象となるかどうかが問題となる。
 議会の一般質問における除斥の是非については、相対する見解が存在する。地方議会実務研究会編『地方議会実務提要』(ぎょうせい、加除式)1145頁における見解と、地方自治制度研究会編『地方財務実務提要』(ぎょうせい、加除式)262頁の見解である。
 『地方議会実務提要』1145頁における見解では、「一般質問において、A議員が引き起こした不祥事件の疑いについて、町政事務とのかかわりから町長に問いただす場合、A議員は除斥すべきか」との問いに対し、「除斥対象とはならないと解する。すなわち、一般質問自体は、その意義からして、議会の意思決定を伴わないので、除斥の必要はない」として、自治法117条における事件は議会の意思決定を伴うものに限定すると解釈している。
 これに対し、『地方財務実務提要』262頁の見解は、「特定団体の役員の職にある議員が、その団体に直接関連した事件について、議会で一般質問をすることは、自治法第117条の除斥に該当しないか」との問いに対し「当該事件がその具体的事情から判断してその業務と直接の利害関係を有すると認められる場合、同条の規定により除斥の対象となり、当該事件について一般質問をすることはできないこととなります」として、一般質問であっても一身上の事件又は従事する業務に直接の利害関係のある事件については除斥の対象となるとしている。
 二つの対立する見解が存在するが、一般質問においては除斥を適用する必要はないと解する。なぜなら、一般質問は当該地方公共団体の一般行政について執行機関の見解を求めることができるが、議会の議決を有する事件と異なり、議会の意思決定に中立公平性を害するほどの影響を及ぼすものであるとまでいえず、除斥を適用するまでの必要性が考えられないからである。また議会の議決を要する事件と異なり、その対象が幅広いため除斥が適用されると解されると、その適用頻度が多くなる場合が推測され、逆に議員の議会審議の参画の権利を侵害するおそれがあるからである。
 以上から、議会の審議における除斥は議会の議決を要する事件に限定し、一般質問では除斥の必要はないと解する。

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