介護報酬・基準上でのICTの位置付けとは
こうした介護現場におけるICT活用については、厚生労働省も冒頭の三つの課題解決の切り札と位置付け、介護報酬・基準上での促進策を進めています。
2018年度の介護報酬・基準改定の中から、いくつかチェックしてみましょう。
まず、定期巡回・随時対応型訪問介護・看護及び夜間対応型訪問介護において、「一定の要件」のもとにオペレーター(随時の対応・訪問を行うために利用者からの連絡を受ける職種)の配置要件が緩和されました。この場合の要件緩和とは、オペレーターと実際の訪問要員の兼務を指します。この緩和は夜間・早朝のみの適用でしたが、2018年度の改定では、日中も含めた24時間での適用となりました。
この緩和のための「一定要件」ですが、具体的には、ICT等の活用により「利用者の心身状況等の確認ができること」などが挙げられています。例えば、利用者の心身状況についてセンサーがキャッチし、それを職員が事業所外でも確認できるといったシステムです。
出典:2018年度介護報酬・基準改定より
図4 定期巡回・随時対応型訪問介護・看護及び夜間対応型訪問介護における基準緩和
診療報酬上ではICT導入が先んじている
また、訪問・通所リハビリテーションでは、多職種によるリハビリテーション会議の開催等を要件としたリハビリテーションマネジメント加算が設けられています。このリハビリテーション会議には医師も参加するのですが、医師が多忙によって参加しにくいという状況がありました。そこで、医師についてはテレビ電話会議システム等(ICT)の活用による参加でもOKとなりました。
ちなみに、診療報酬側でも、患者の退院時に開催されるカンファレンス(介護保険側のケアマネジャーが参加する退院時共同指導料2の注3のカンファレンスも含む)において、ICTでの参加が認められています。2020年の診療報酬改定では、このICTによる会議参加について「やむを得ない場合」以外でもOKとする緩和が図られました。
また、2020年度の診療報酬改定では、医師のみならず、管理栄養士による外来栄養指導や薬剤師による服薬指導でのICT活用による緩和策が進められました。介護職側の連携対象となる医療職全般において、制度上でのICT活用の範囲が急拡大しているわけです。
つまり、多職種連携のステージにおいて、医療側の改革に引っ張られる形で、介護側もICT活用を進めざるを得ない環境が進んでいるという点に注意が必要です。
出典:2020年度診療報酬改定より
図5 診療報酬側のICTによる業務緩和策