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2020.10.26 議員活動

第6回 防災復興の行政組織と政策立案

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まとめ(議員としての着眼点はここだ!)

 第6回では、災害に備えた自治体の取組み、災害発生時や危機管理の仕組み、復興に向けた自治体の政策形成を中心に学びました。ここでは、以下の3点について指摘したいと思います。

1 地域防災の担い手育成
 東日本大震災やその後の大規模な風水害、熊本地震などの大規模災害を経て、国民の防災に対する関心は高まっているとみることができます。しかし、その意識の高まりが自主防災組織や消防団の担い手不足解消に作用していないのはなぜでしょうか? 自主防災組織等への参加者が増えない要因としては、仕事等で時間がないということが挙げられます。つまり、防災への関心があっても、活動に拘束される時間が長く、参加のハードルが高いということです。それならば、自主防災組織等の既存の地域防災の枠組みよりも、より柔軟な枠組みをつくってみてはどうでしょうか。
 全国の市町村では、防災士の資格取得の助成を行っているところがあります。また、大学では、市民を対象に防災リーダー研修を実施しているところもあります。筆者も、防災士の資格研修や岩手大学での防災リーダー研修に参加しましたが、参加者の中には、町内会等の役員のほかに、企業等の防災担当者も多く参加していました。大学の研修では、研修受講者のOB・OGの会も開催されるなど、草の根レベルの防災の組織化も行われています。このように、防災の草の根を広げていくことが大切です。

2 災害後の自治体の通常業務の不備への対応
 自治体では、災害時には、被災者の救援のための応急業務に職員が追われるのは当然ですが、一方では、通常業務もおろそかにはできない責任があります。しかし、前述した生活保護関係業務や建築確認業務のように、現実の自治体現場では、災害対応のために処理が遅れたり、サービスを一部限定する場合もあります。住民も「非常時だから」ということで理解している面もありますが、法的には事務の懈怠(けたい)や瑕疵(かし)とみなされる可能性もあります。この点について、行政手続条例等での対応が必要と考えます。災害時や非常時であっても許容されない場合を想定して、自治体の通常業務で法令が求めるレベルと災害時の現実の運用のレベルのギャップを埋める法的対応も今後検討することが求められます。

3 防災条例による復興計画の策定
 現行の「大規模災害からの復興に関する法律」では、東日本大震災級の巨大災害が発生した場合に限り自治体が復興計画を策定することとなっています。しかし、現実には、地域レベルの大規模災害でも住民生活に大きな支障が生じており、自治体が被災地域の復興計画を自主的にとりまとめる事例が多く見られます。
 このような自主的に策定される復興計画の策定の考え方や手続を、自治体の防災条例等の中で位置付けてはどうでしょうか。これにより、災害後の復興の政策立案が自治体に義務付けられ、住民にとっても安心感につながります。自治体の中には、防災条例を制定していないところも多く見られますが、制定の際の検討材料として、被災後の政策立案の仕組みを条例の中に組み込んでおくことも考えてみてはいかがでしょうか。

(1) 総務省消防庁ホームページ「消防団に関する数値データ」における「図表2 消防機関数と消防職団員数の推移」(https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/data/scale/)参照。
(2) 総務省消防庁・前掲注(1)「図表6 消防団員の年齢構成比率の推移」(https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/data/scale/index.html)より。
(3) 同旨、青山佾「組織と法制度上の課題」市川宏雄=中邨章編著『災害発生時における自治体組織と人のマネジメント』(第一法規、2018年)30~31頁。
(4) 2018年12月26日総務省消防庁発表「地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果」より。
(5) 津軽石昭彦「地方自治体における防災復興行政の諸相─防災復興政策の立案と政策法務の視点から─」ジュリスコンサルタス28号(2020年)60頁参照。
(6) 津軽石・前掲注(5)45頁参照。
(7) 2011年8月「東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律」(原発避難者特例法)が施行され、特定の市町村からの原発事故による一時避難者に対して、避難先での福祉教育サービスの提供が可能となりましたが、生活保護については同法の対象となっていません。生活保護法では、住民登録の有無にかかわらず、当該保護対象者の居住地又は現在地を所管する福祉事務所がサービスを提供することとなっていますが(生活保護法19条1項)、実務的には、保護決定する自治体がどこかは判断が難しい場合も考えられます。
(8) 神戸市「阪神・淡路大震災の概要及び復興」(2011年)68頁参照。

 
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