2020.10.26 議員活動
第6回 防災復興の行政組織と政策立案
(3)復興のための専担組織
復興本部等の復興のための政策調整を行う組織が設置されると、自治体では、復興のための専担組織を設置する場合があります。都道府県では、東日本大震災の復興政策の企画立案調整を担う部局相当の組織が被災3県に設置されました。このほか、新潟県(新潟県中越地震)、鳥取県(鳥取県中部地震)などで設置された事例があります。いずれも地震災害による被害からの復興が設置目的です。組織規模については様々ですが、部局相当、課相当の組織を設置し、人員は5人程度から、最も大きいのが福島県避難地域復興局で68人(2018年9月現在)です。東日本大震災の復興専担組織は、規模としては大きくなっています。
(4)自治体における通常業務への影響
自治体では、災害時であっても執行しなければならない通常業務があります。発災当初は、業務継続計画等により災害対応業務が優先業務とされていても、応急対策にめどがつくと、徐々に通常業務も並行して実施していくことが求められます。
特に、自治体業務で留意する必要があるのは、手続や期限が法定された業務があることです。この点、筆者が災害発生後、おおむね3か月程度の通常業務への影響について、住民の権利義務に関わる通常業務の代表的な例として生活保護関係業務と建築確認業務の執行状況について、通常どおり事務が執行できたかどうかについて、都道府県の担当課の認識を調査しました(6)。その結果、まず生活保護関係業務については、「通常どおりできなかった」と回答した自治体もありました。東日本大震災、熊本地震、平成30年7月豪雨の被災自治体では、ケースワーカーが被災者への救援業務に忙殺され、保護対象者に対する巡回指導などの業務を十分にできなかったとの回答が回答23府県中6県ありました。また、東日本大震災の発災直後に一時避難者を受け入れた自治体では、保護責任がいずれの自治体にあるか対応に苦慮したとの回答もありました(7)。
建築確認業務についても、一部「通常どおりできなかった」という自治体が23府県中4県ありました。「通常どおりできた」自治体の多くは、建築確認業務を民間に委託していたところでした。「できなかった」要因としては、災害後の建物の危険度判定、罹災(りさい)証明のための損壊度合いの判定などの業務への対応や、庁舎の被災を挙げる回答も見られました。
災害時でも、住民の中には、災害の影響を全く受けない住民もおり、行政が対応できない場合のこれら住民の権利保護などをどうするかについては、法的に明確な対応が定まっていないのが現状です。