2020.10.26 議会改革
第13回 自治財政における議会の役割を再認識する
4 予算執行に関する議会の関与
予算の執行の権限は長に専属するが、予算の執行ではあっても、自治体に大きな影響を及ぼすものとして条例で定める契約の締結や財産の取得・処分については、議会の議決を要するものとされ、議会が監視を行うことになる。
一定の契約の締結について議会の議決事項としたのは、重要な契約の締結に関し、その適正を担保するため、その必要性、相手方、契約価格の妥当性などについて、議会の議決を必要とし、その判断にかからしめるものである。ただし、議会の議決を経ることを要する契約を定める条例の基準については、政令でその種類と予定価格が定められており、この契約の種類を変更したり、政令の金額を下回る定めを設けたりすることはできないものと解されており、また、地方公営企業の業務に関する契約の締結についてはすべて議会の議決を要しないものとされている。
この議案の提案権は長がもつが、議決は具体的な契約について経る必要があることから、長において仮契約を締結するなどして、少なくとも契約の目的・方法・金額・相手方などを明記した議案であることを要する。議会が議決を行うにあたっては、否決することはできるが、修正を行うことはできないものとされている。
財産の取得・管理・処分の一部についても議会の議決を要することとされているが、これは、自治体の財産の状態に変動をもたらす行為の適否について議会の判断にかからしめるものである。具体的には、①財産を交換し、出資の目的とし、支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、貸し付けること、②不動産を信託すること、③条例で定める財産の取得又は処分をすることが議会の議決の対象とされているが、③の条例については、政令で財産の種類(土地については面積を含む)及び金額について基準が示されている。
このほか、寄附又は贈与の受領について負担付きのものを受け取る場合には、自治体に負担を生じさせることから、議決事件とされている。権利の放棄についても、自治体の保有する財産権その他の権益を対価なく減少させ、権利義務関係に影響を及ぼすものであることから議決事件とされ、損害賠償額の決定についても、判決により確定したものなどを除き議会の議決事件とされている。
なお、長や職員に対する自治体の賠償請求権については、住民訴訟の係属中に議会の議決により放棄する事例が見られたことから、その議決の効力が議論となり、神戸市外郭団体派遣職員人件費違法支出事件・最判平成24年4月20日民集66巻6号2538頁は、その適否の実体的判断については、裁量権の逸脱や濫用による議決の違法・無効とされる場合があるとしたものの、放棄の実体的要件を定めた規定の欠如を理由に、議会の議決と長の執行行為(条例による場合はその公布)といった手続的要件を満たしている限り、議決機関である議会の裁量権に基本的に委ねられているとした(5)。