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2020.10.26 議会改革

第13回 自治財政における議会の役割を再認識する

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 以上のように、予算に関する議会の権限は様々な制約を受けることになる。加えて、議会が予算を否決したり、議決を引き延ばしたりすることは、長との全面対決となりかねず、住民生活に大きな影響を及ぼすことにもなりかねない。
 このようなことなどもあって、議会における予算審議は、実際には、時間が短く、形骸化していることも少なくないといわれる。他方、議員は、予算編成の過程で、執行部の側に、個別に要望をし、それが予算に反映されたかどうかを重視することになる。議員にとって、地域等の支持母体が求める予算を獲得することが大きな関心事となっており、実績ともなる。自治体によっては、予算の編成過程において、各会派からの予算要望、各会派に対する主要施策の事前説明などを慣行化しているところもある。
 そして、この予算こそが、与党会派の生成・拡大を誘引するものとなっている。すなわち、要望を予算に反映させるためには、与党的なスタンスをとることが有利となり、ある程度の要望が反映されることで、議会審議ではその成立を担うことになるというものだ。
地域や住民の要望を執行部の側に伝えることについては、議員の役割として否定されるべきではない。ただ、行き過ぎた事前の働き掛けや調整は、予算編成過程をゆがめるだけでなく、議会において審議よりもできるだけ早い成立を目指すこととなり、予算審議を空洞化させるおそれがある。
 また、議会における予算審議においては、各常任委員会に分割付託しているところが見受けられる。しかしながら、予算は一つの議案であり、翌年度の行政活動の全体像を示すものだけに、本会議だけでなく、委員会での全体的・総合的な審議も必要である。規模の小さい議会はともかく、予算委員会を常任委員会あるいは特別委員会として設置し、必要があれば、分科会を設置したり、各常任委員会にそれぞれの所管ごとの委嘱審査を行わせ、分科会的な機能を果たさせたりするようなことなどが考えられるのではないだろうか。決算審査の結果を予算審議に反映するため、あるいは予算と決算の一体的な審査のために、予算決算委員会を設置する議会もある。補正予算に関しては関係常任委員会に付託する取扱いをする議会も見られるが、補正予算は当初予算の変更であり、当初予算に盛り込まれなかった経費が安易に盛り込まれるなど無駄な支出につながりやすいことなどが指摘されていることにも、留意すべきだろう。
 当初予算について、執行機関側の予算編成が始まる前や予算要求の段階から、予算委員会で、予算調製方針、予算要求の状況などの調査を行い、意見や提言などを執行機関の側に行っているところもある。決算審議にとどまらず、行政評価の結果を予算審議に活かす取組みなども考えられる。款項目節による性質別予算ではそれぞれの事業内容やコストを把握できないとして、何らかの形で事業別予算の方式を採用しているところも少なくない。その場合、予算書などに事業別の説明が加えられ、議会ではそれをもとに予算審議が行われるとともに、決算でも事業別の成果表が作成され、それも用いて審議が行われるなどしている。
 予算のベースとなるべき自治体計画との関係や整合性のチェックも、総合的・長期的な視点に立った審議ということから、議会に求められる役割といえる。
 このほか、住民生活に最も影響のある予算の審議において、住民の意見をどのように反映していくかも重要となることはいうまでもない。住民が予算の一部について提案・決定する参加型予算(市民予算)の取組みも日本の自治体でも行われるようになってきているが、議会審議といかに結び付け、住民参加型の審議を実現していくのかということも課題となりうる。
 なお、議会関係者の側からは予算に関する議会の権限を強める要望や提言などがなされているが、まずは審議の充実を図ることが先決だろう。その上で、それらのうち、予算の編成権を議会に認めるというのは現実的ではないとしても、増額修正の制約をなくすことは、長には再議の権限があることなどからすれば、将来的な選択肢となりうるのではないだろうか。

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