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2020.10.26 議会改革

第13回 自治財政における議会の役割を再認識する

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【地方公会計の整備と議会】
 地方自治体における予算・決算に係る会計制度(官庁会計)は、現金収支を議会の民主的統制のもとに置くことで、予算の適正・確実な執行を図る観点から、確定性・客観性・透明性に優れた単式簿記による現金主義会計を採用しており、複式簿記による発生主義会計を採用する企業会計方式とは異なる制度となっているが、近年は、地方公会計改革が進められ、予算・決算制度を補完するものとして、企業会計の考え方・手法を活用した財務書類等の作成・開示が行われるようになっている。
 これは、発生主義・複式簿記を採用することで、現金主義・単式簿記だけでは見えにくい減価償却費、退職手当引当金といったコスト情報、資産・負債といったストック情報の把握が可能となるほか、財務書類等の作成・開示により、コスト情報・ストック情報が「見える化」され、住民や議会への説明責任をより適切に果たすとともに、財政マネジメント等へ活用することで、財政の透明性を高め、その効率化・適正化の推進を図ろうとするものだ。2014年に総務省の研究会によって示された統一的な基準(10)では、固定資産台帳の整備を前提としているため、財務書類の作成過程で整備される固定資産台帳や未収金台帳・地方債台帳などの管理簿とともに帳簿上で資産や負債の一元管理を行い、財政再建計画を立てたり、公共施設等の維持マネジメントや更新計画を立てたりすることが容易になり、さらには予算編成に役立てることも可能となる。また、現金支出を伴わないコストも含めたフルコスト情報を把握することにより、行政事業のコスト管理に役立てたり、事業別・施設別のセグメント分析などによる個別の採算管理や事業ポートフォリオの効率化につなげたりすることもできる。さらに、統一的な基準により共通の方式で財務書類が作成されることによって、自治体間で財政状況を比較検討することも可能となる。
 統一的な基準による財務書類は、「貸借対照表」、「行政コスト計算書」、「純資産変動計算書」及び「資金収支計算書」の財務4表と附属明細書、注記とされている。
 財務書類等については、監査委員による審査や議会への報告が義務付けられているものではないが、前者は財務書類等の正確性・信頼性の確保に資するものであり、後者は自治体議会の監視機能の向上に資するものであることから、いずれも有意義なものであり、その取組みを進めていくことが重要といえる。
 しかしながら、総務省の「統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査(令和2年3月31日時点)」によれば、財務書類等を決算審査の補足資料とするなど議会における説明資料として活用したのは、9都道府県(19.1%)、7指定都市(35%)、211市区町村(12.3%)にとどまる。
 自治体議会での財務書類の活用に懐疑的な見方もなお見られないではないが、議員の中には財務書類を見慣れている民間企業の出身者や税理士等の資格をもっている者がいることも少なくなく、そのチェックや活用を行うことのハードルはそれほど高くないことが多いのではないかと思われる。議会関係の取組みとしては、例えば、大阪府財政運営基本条例のように、決算を議会の認定に付す際の財務諸表の添付などについて規定したり、町田市のように、事業別財務諸表(課別・事業別行政評価シート)を地方自治法233条の「主要な施策の成果に関する説明書」として提出し議会の決算審議に活用したり、美濃加茂市のように、財務書類やセグメント分析の概要を分かりやすくまとめたアニュアルレポートを作成・議会提出・公表しそれを用いた議会での質疑応答が行われる例などが見られる。
議会として、財務書類等を適切に提出させ、それを予算や決算の審議に活かしていく工夫を行い、その効果的な運用や仕組みの整備を図っていくことが求められているといえるだろう。

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