2020.10.12 議員活動
第1回 政策課題と議論
元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
1 政策型思考とは
今月から「【講座】自治体議員のための政策型思考!」というタイトルで連載を始める。この連載では、「政策型思考」を「政治上の方針や手段の規範となる考え」ととらえることにする。自治体議員には、どのような「政策型思考」を持つことが期待されるのであろうか。
第1回である今回は、「政策課題と議論」について考える。
2 自治体議会・自治体議員の権限を問う
はじめに、自治体議会・自治体議員の権限を問うてみよう。政策の実施について、自治体においては行政が行うのであるから議会としては関与できないという見方があるかもしれない。確かに、政策の実施は行政が行う。しかし、実施以外の政策過程の各段階(課題抽出・選択肢作成・決定・評価)の努力により、実質的には実施に関与しうることができる。条例や予算など重要事項を決定できるのは議会の権限である。副市長、教育長等の同意権も持つ。地方自治法96条2項により議決事件を追加することもできる。表1は、議会と行政(首長)の権限を形式的に示したものであるが、議会の持つ権限を有効に働かせることにより形式的には権限がなくとも実質的に影響力を行使することができる。そうすることで議会・議員は実態的にも行政と対等な権限を持ちうるのである。