2020.09.25 議員活動
第1回 地方自治体における広報と広聴の現状 ──自治体コミュニケーションが地域運営を強くする
4 公共コミュニケーションと自治体コミュニケーションとは何か
前置きが長くなりましたが、ここからが本題になります。最初に公共コミュニケーションの定義を考えます。公共コミュニケーション学会という学術団体があります。同学会は公共コミュニケーションを「行政・議会・大学・NPO・医療福祉・ソーシャルビジネスにおける広報やステークホルダーとのコミュニケーション」と定義しています。しかしながら、公共コミュニケーションに決まった定義はないようです。また現時点においては、参考文献も多くは存在していません。そのため同学会において理論化が進んでいると考えられます。
次に、地方自治体に限定して考えます。自治体は住民に対して、広報と広聴を実施しています。広報とは「自治体の事業内容や活動状況を住民等に広く知らせ、理解を求めること」と定義できます(図1)。広聴とは「自治体が住民等から広く意見を聞くこと」です(図2)。広報と広聴の定義にある「住民等」とは自然人(住民)だけに限らず、法人や法人格のない任意団体等も含まれます。また場合により、交流人口や関係人口も含まれます。なお、「広」が「公」に変わり、公報と公聴となっても、基本的には類似した概念です。
自治体が広報と広聴の両輪を回すことによって、住民等とのコミュニケーションが成立します。このような状態を筆者は「自治体コミュニケーション」と称しています。自治体コミュニケーションとは「地方自治体と利害関係者との政策(戦略)に関するコミュニケーション(広報・広聴)活動」と仮に定義しておきます(図3)。自治体コミュニケーションを成功させるためには、①広報により積極的に情報発信し住民等と共有する機会を設け、②広聴により住民等から多様な意見や要望等を得ることが大事です。
なお、近年は自治体の世界にも「広告」という概念が求められるようになってきました。しかしながら、自治体では広告という言葉はなじまないため、「戦略的広報」や「シティプロモーション」などと称されています。広告とは、不特定多数に情報を周知するのではなく、対象層をターゲティングして直接的に伝える活動です(図4)。なお、表1は広報と広告の違いになります。
話を戻します。自治体コミュニケーションは広報だけではなく、広聴も踏まえた双方向性がないと成立しません。これからの時代は、自治体だけで地域運営を進めることは難しくなりつつあります。その理由は、自治体の財政難であったり、多様化する事業の幅であったり、職員の継続的な減少であったりと、多様な理由があります。これからの時代は、自治体と住民等が協働して地域運営を進めなくてはいけません。その前提にあるのが自治体コミュニケーションです。