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2020.09.25 議員活動

個人演説会において会場外にいる候補者の映像をリアルタイムで会場内に配信・映写し演説することは可能か/実務と理論

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5 設問の検討

 以上のことを前提に、個人演説会において演説会場外にいる候補者本人の映像をリアルタイムで会場内に配信・映写することができるかどうかについて検討する。

(1) 会場外にいる候補者の映像をリアルタイムで会場内に配信・映写し、演説すること
 法143条1項4号の2の規定により「屋内の個人演説会場内においてその演説会の開催中掲示する映写等の類」の掲示が可能であるから、屋内の演説会場内においてその演説会の開催中、特定の者(演説会主催者側のスタッフ等)が外部からの映像を受信し、その映像をスクリーンに映写することは差し支えない。
 また、その内容については特段の規制がないことから、会場外で候補者が演説している様子を映すことも問題はない。この場合において、法142条の3第3項の規定による表示は不要と解される。

(2)法151条の5との関係
 一方で、法151条の5の規定により、放送設備を使用して、選挙運動のために放送をし、又は放送をさせることは禁止されているが、前述のとおり、特定の者を対象として送信されるものや受信者の要求に応じて情報がそのつど送信されるもの(=インターネットのホームページやインターネットでの配信サービス)は「放送」には該当しないと解されているため、設問のケースのように、演説会主催者側のスタッフ等の特定の者のみが映像を受信するものであり、当該スタッフ等の求めに応じて送信されるものは「放送」には当たらないと解される。
 したがって、個人演説会において会場外にいる候補者の映像をリアルタイムで会場内に配信・映写し、演説することは、法151条の5において禁止されているケースには当たらないと解される。

6 まとめ

 以上、設問について具体的に検討を行ったところであるが、屋内の演説会場においてその演説会の開催中、特定者が外部からの映像を受信し、その映像をスクリーンに映写することは差し支えない。
 また、このことから、前述のとおり衆議院小選挙区選挙、参議院選挙区選挙及び都道府県知事の選挙にあっては、同時に開催することができる個人演説会は5か所に限られてはいるものの、その範囲内で個人演説会を同時開催し、各会場に別会場にいる候補者の映像をリアルタイムで配信・映写することも可能である。
 このように、社会の変化に応じて選挙運動の手法の多様化も想定される中にあって、法の規定を正確に理解しておくことは重要であるといえる。
 本問での検討が、文書図画の掲示に係る各種規制をはじめ、候補者が行う選挙運動に関して法が定める様々な規制に対する理解を深める一助となれば幸いである。
(※本記事は「自治実務セミナー」(第一法規)2020年5月号より転載したものです)

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