2020.09.10 議会運営
第73回 陳情の取扱いについて
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
陳情の取扱いについて
市民から陳情が提出されたが、その内容は陳情が提出された議会に所属する議員の本会議における発言を批判し弁明を求めるものであった。当該陳情を委員会に付託せずに即決することは可能か。また、そもそも受理はするが議会において審議を行わないことはできるのか。
陳情とは、公の機関に対し、一定の事項を要望する事実上の行為をいい、住民の要望で請願を除いたものをいう。陳情については、憲法及び地方自治法上、特に規定はなく、会議規則において一定の陳情についてその手続規定が定められているのみである。
しかし、請願も陳情もその根本とするところは住民の要望であり、住民の負託を受けた議会としては形式的要件の違いだけで陳情を請願と異なる取扱いとするのではなく、陳情の内容で議会が判断する必要があるといえる。
なお、請願と陳情は、住民の要望を地方議会に訴えるという点で同様であるが、地方自治法(以下「法」という)124条における紹介議員の有無をはじめ、請願について会議規則に規定された形式的要件の違い、さらに法125条における採択した後の執行機関への送付や取扱いについても違いがある。
【法124条】
普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
【法125条】
普通地方公共団体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共団体の長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、かつ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる。
次に、標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)145条及び標準都道府県議会会議規則(以下「都道府県会議規則」という)93条における「陳情書……に類するもの」とは、陳情という名称ではないが、陳情の内容を一応整えている嘆願書や要望書、決議書等をいう。
【市会議規則145条】
議長は、陳情書又はこれに類するもので、その内容が請願に適合するものは、請願書の例により処理するものとする。
【都道府県会議規則93条】
陳情書又はこれに類するもので議長が必要があると認めるものは、請願書の例により処理するものとする。
ちなみに「請願」は、国又は地方公共団体の機関に対し、その職務に関する事項について希望することを陳述する行為をいい、憲法16条に規定された国民の権利である。