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2020.08.25 議員活動

第5回 災害直後の生活を支える制度と仕組み

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まとめ(議員としての着眼点はここだ!)

 第5回では、災害が発生した場合の、実際の被災者の支援について、災害救助法と、災害救助の運用を中心に学びました。ここでは、以下の3点について指摘したいと思います。

1 災害時の「ヒト・モノ・情報」の資源管理体制の確保
 災害救助を的確に行うためには、スピードとマッチングが極めて重要です。すなわち、必要とする被災者に必要な質と量のサービスを迅速かつ効果的に提供できることが大切です。そのため、いわゆる「プッシュ型」といわれる物資の支援方式が、東日本大震災の翌年2012年の災対法の改正により盛り込まれ、緊急の場合は、被災自治体からの物資の支援要請がなくても国から物資が送り込まれるようになりました。しかし、プッシュ型支援については、必ずしも被災地の要望にマッチしない物資が大量に送り込まれるなどの課題も指摘されています(10)
 このような「プッシュ型」の支援は、東日本大震災時もその萌芽(ほうが)が見られましたが、効率的に支援が行われるためには、物資をただ「縦割り的に送りつける」だけではなく、現地の断片的な「情報」を分析し、効果的に「モノ」が配分できるような「ヒト」がいることが大切です。その意味で、災害時に備えた戦略的な「ヒト・モノ・情報」の資源管理、特に人材の育成と体制の確保が大切です。

2 自治体内外の調整を円滑に
 災害直後は、自治体現場がパニック状態にあることもあり、国と自治体、都道府県と市町村の調整が円滑にいかないことが多々あります。前述した2012年の災害救助法改正による、希望する政令市への災害救助事務の都道府県からの権限移譲の発端となったのも、東日本大震災時の都道府県と政令市の間の応急仮設住宅の整備をめぐる連絡調整の問題でした。
 このような問題の根本には、災対法が市町村を直接の実施主体としているにもかかわらず、災害救助法では都道府県が救助の主体とされているなど、法律により実施主体が異なっていることも一因と考えられます。また、それ以前に、国や自治体同士、さらには自治体内部の縦割りが障害となっていることもあります。災害時には、このような行政の縦割りが顕著に現れやすい傾向があります。市民目線に近い地方議員の皆さんも、平時から様々な機会を通じて行政の縦割りをチェックしていくことが重要です。

3 コミュニティ施策の多面的機能を活用しよう
 災害時における避難所や応急仮設住宅団地などの運営の成否は、それぞれの施設内のコミュニティの構成員のまとまりのよさにかかっています。しかし、災害を想定したコミュニティづくりの訓練をするのは大変な労力を要します。そこで、自治体で通常行われている様々なコミュニティ施策の中に、防災に関するメニューを盛り込んでいくことも有効です。最近は、「ハグ(HUG・H(避難所)、U(運営)、G(ゲーム))」や「防災クロスロード」など、ゲーム感覚で避難所運営や災害時の意思決定を体験できるものもあります。コロナ禍の中、豪雨災害が発生していますが、この機会に災害直後やその後を想定したコミュニティづくりを議員の皆さんも考えてみましょう。
 

(1) 内閣府政策統括官(防災担当)「災害救助事務取扱要領」(2020年5月)3頁参照(http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/kyujojimutori1.pdf)。
(2) 災対法2条1項、災対法施行令1条参照。
(3) 法4条2項では、「埋葬」については金銭の支給を認めています。
(4) 東日本大震災の際に「釜石市鵜住居地区防災センター」で多くの犠牲者が出た事案の詳細は、連載第4回(第8講)を参照。
(5) 国が出している避難所運営に関する指針として、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(内閣府、2013年8月)、「避難所運営ガイドライン」(内閣府、2016年4月)、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(内閣府、2016年4月)、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(内閣府、2016年4月)などを参照。
(6) 令和元年10月23日内閣府告示378号により改正された「災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準(平成25年10月1日内閣府告示228号)」。
(7) 「災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について」(平成25年6月21日付け各都道府県防災主管部長宛、内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(総括担当)、消防庁国民保護・防災部防災課長、厚生労働省社会・援護局総務課長通知)参照。
(8) 災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準2条2号イ(5)及び(6)参照。
(9) 法2条の2参照。
(10) 例えば、西日本豪雨について「(時時刻刻)必要な物資、どう届ける 西日本豪雨」朝日新聞2018年7月12日付けでは、物資の保管場所に困るなどの問題が指摘されています。

 
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