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2020.08.25 議員活動

第5回 災害直後の生活を支える制度と仕組み

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(3)避難所の運営
 避難所の開設当初は、避難所へ派遣された市町村職員が主体的に運営していかざるをえません。このため、平時からの準備として、避難所開設の主体である市町村において、防災担当部局を中心に福祉、保健、環境衛生などの関係部局の職員や住民代表などにより、避難所運営のための準備会議を設け、避難所が設置された際に必要と考えられる事項や手順をマニュアル化し、訓練することが重要です。
 マニュアルの作成に当たっては、避難所には、①被災者の安全な衣食住の提供のほか、②物資の集積配布、③被災地や被災者の情報収集・発信、④在宅避難者への支援拠点、⑤被災者の相談窓口などの機能が求められ、これらの機能を果たすための運営の仕組みを地域事情に応じて考えておく必要があります。
 次に、地域特性や居住人口などにより、指定避難所に必要な物資を実際に備蓄し、数量や品質を管理していきます。災害時には被災者の居住スペースの無秩序な「場所取り」などが見られることから、平時から避難所ごとの空間配置イメージを考えておき、要配慮者の避難スペース、男女別のトイレなどをあらかじめ決めておくことは、新型コロナウイルス感染症対策の上からも大切です。
 災害が発生し、避難所が実際に開設された際には、あらかじめ準備していた「避難所運営マニュアル」に基づき、まず運営責任者を決めます。入り口に受付を設け、避難者名簿をつくり、避難所運営のための役割分担を決めていきます。運営責任者は、本来は避難者の代表がなりますが、発災当初は、派遣された市町村職員等が当面代行することもありえます。このような形で避難所の運営体制を構築します。次に、どの被災者にどのようなサービスの提供や物資がどの程度必要かなどを把握し、これらを調達配布する避難所運営計画を立て、避難所の運営サイクルを徐々に定着させながら、避難者自身による自主的な運営に移行していきます(5)
 東日本大震災の事例などを見ると、なかなか被災者に情報が伝わらず、被災者の不安要因の一つとなったり、長期の避難生活で被災者のストレスが蓄積され、トラブルが発生したりしています。また、炊き出し等の役割が女性に偏ったりするなどの例も散見されました。自治体等がNPOやボランティアの支援を受けながら、頻繁にSNSや印刷物で情報提供したり、市町村職員や保健師等がこまめに巡回するなどにより、個々の避難所の問題をケアしていくことが大切です。

(4)避難所の費用基準
 避難所の運営経費については、法適用対象の災害については、一義的に都道府県が負担し、その後、国が最高90%まで財政支援することとなっており、避難所の運営もその中に含まれます。
 避難所での被災者の生活費の負担は基本的にありませんが、細かく国の単価基準が定められています。国の単価基準は、一般基準と特別基準があり、直近の一般基準(6)によると、例えば光熱水費等の避難所設置費は被災者1人1日当たり330円、食料の提供に関わる経費は同1,160円などで、その範囲内で都道府県知事が定めることとされています。一般基準によることができない場合は、その都度、国に協議して定める特別基準に基づく単価を適用することとされています。全国一律の一般基準だけでは現実的には厳しいものと考えられ、特別基準の適用には国の関与を避けられない仕組みとなっています。
第5-4
2 罹災証明書の交付と被災者台帳の作成
 住民生活の再建支援を進めるための基礎となるものとして、罹災証明書の交付(災対法90条の2)、被災者台帳の作成(災対法90条の3)が自治体には義務付けられています。罹災証明は、住宅を失った被災者が被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金の申請時等に利用するなど、被災者に対する各種支援制度を受ける前提となるもので、家屋の被害状況等を市町村長が証明するものです。被災者台帳は、被災者に対する支援を効率的に行うために、漏れや重複がないように被災者の情報を台帳化するものです。それぞれ東日本大震災後の2013年の災対法改正で追加されました。
 罹災証明については、法改正前は、災害により被災した住家等について、法令上明示的な位置付けはないものの、災害対策に関する市町村の自治事務の一つとして、かねてより災害発生時に被災者に交付されてきたものですが、行政の支援メニュー以外にも例えば保険金の支払、学校・会社からの支援の届出等にも幅広く活用されている実態がありました。東日本大震災に際しては、住居の被害状況を1軒ずつ市町村職員が調査するため、罹災証明書の交付に長期間を要し、結果として被災者支援の実施そのものに遅れが生じた事例も数多く見られました。2013年改正では、罹災証明書を遅滞なく交付することを市町村長の義務として規定し、調査に従事する職員の育成や他の地方公共団体等との連携確保など、必要な実施体制の確保に平常時から努めることが市町村長の義務とされましたが、その後の災害でも証明書の交付の遅れが指摘されています。
 罹災証明は、被害状況に関する事実の証明ですが、筆者がヒアリングをした熊本地震等の被災地では、実際は住居が「全壊か、半壊か」は微妙な場合もあり、証明内容に対して被災者から不満が出る場合もあるのが実態です。国の通知(7)では再調査の依頼にも応じる旨の周知をすべきことが述べられ、自治体では再調査に努めているとされますが、再調査要請をしても、調査は同じ部署が行うこととなり、被害認定の結論が大きく変わることは少ない状況です。証明内容に不服がある場合でも、行政処分ではないので救済手続もありません。より説明責任を果たすための検討も必要と考えられます。
 

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