2020.08.25 議員活動
第5回 災害直後の生活を支える制度と仕組み
第10講 災害直後の被災者生活支援制度の実際
第9講では災害救助法の概要について説明しましたが、ここでは災害救助の実際の運用について説明します。
1 避難所の設置運営
(1)避難所の概念
一般に「避難所」といわれるものには、法的には次のような種別があります。
ア 災害予防対策としてあらかじめ指定された避難施設
災対法では、災害予防対策として、住民が避難する施設をあらかじめ市町村が指定しておくことが定められており、これには二つの類型の避難施設があります。
第1には、「指定緊急避難場所」(災対法49条の4第1項)です。これは、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合にその危険から逃れるための避難場所として、洪水や津波など災害の種類ごとに安全性等の一定の基準を満たす施設又は場所を市町村長が指定するもので、公民館や体育館等の頑丈な建物で、一時的に避難する場所です。
第2は「指定避難所」(災対法49条の7第1項)です。これは、被災者を災害の危険性がなくなるまで必要な間滞在させ、又は住家を失うなど、家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させるための施設として市町村長が指定するもので、被災者が「滞在」することを前提にしています。「指定緊急避難場所」と「指定避難所」は相互に兼ねることができます。
このような区別がされたのは、2014年の災対法の改正によりますが、これは東日本大震災の際に「釜石鵜住居(うのすまい)地区防災センター」(4)で、両者の区別が明確でないために犠牲者が増加したことなどに起因しています。
イ 被災者が避難する施設としての避難所
災害救助法は、災対法と異なり、災害に伴い実際に被災者が避難する場所を「避難所」とし、施設としての設置基準や運営方法、費用負担などについて定めています。
この場合の避難所には、自治体が事前に指定した避難施設のほかに、協定等により避難所を開設した場合も含まれます。
ウ その他の避難所
これらの種別の中には、被災者の個別の事情に応じて、次のようなものも含まれます。
(ア)福祉避難所
市町村は高齢者、障害者などの要配慮者のための防災上必要な措置(災対法8条2項15号)を講じることとされ、福祉施設等をあらかじめ福祉避難所として指定していますが、過去の大規模災害では収容人数が十分とはいえず、自家用車での車中泊や在宅避難を余儀なくされた事例も見られます。
(イ)広域一時滞在
被災者の居住の確保が市町村内で困難な場合、他の市町村に協議の上で避難することもできます(災対法86条の8第1項等)。
(ウ)在宅避難
市町村は、やむをえない事情で避難所に避難することが困難な被災者に対しても配慮することとされ、物資等の提供もされることとなっています(災対法86条の7)。今年7月の令和2年7月豪雨災害では、コロナ禍の中で、感染リスクを避けるために在宅避難を選択した被災者も多く見られました。
(2)避難所の設置基準
災害予防としてあらかじめ指定される指定緊急避難場所については、災害の種別に応じて、当面の安全を確保することができる立地、構造、収容能力を備え、その場所までの安全な避難経路が確保されていることなどの要件を具備した既存施設が指定されます(災対法施行令20条の3)。
また、指定避難所には、被災者が滞在できる規模、構造が確保されていること、物資等の受け入れや運搬が容易にできること、高齢者・障害者等に配慮したバリアフリー構造などの要件が求められます(災対法施行令20条の6)。実際は、多くの場合、学校や公民館、福祉施設などが避難所となっています。