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2020.08.25 議員活動

第5回 災害直後の生活を支える制度と仕組み

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(3)救助の内容
 法に定める救助の内容については、1でも説明したとおり、当面の被災者の安全確保、当面の生活支援全般にわたるもの11種類が法令で定められています。
 これらの提供方法については、一部(3)を除き、原則、現物給付又は実際的な役務の提供となっています。これは、現実的に、災害現場では、現金を給付されてもすぐには使えない可能性があり、現物等での給付の方が即効性があること、法に定める救助はいわゆる「災害見舞」とは性格を異にしていることなどが考えられます。
 なお、救助の中で、「住居又はその周辺に運ばれた土石、竹木等……の除去」(法施行令2条2号)が規定されており、最近、土砂災害の頻発に伴い、宅地内の土砂や支障物の除去が行政上課題になることがあります。宅地内の土砂等の除去については、住民生活に必要最小限のものは救助対象となりますが、その他のものは環境省や国土交通省などの他の制度の対象となります。
第5-2
(4)物資やマンパワーの調達
 災害救助法では、災害救助のための物資やマンパワーの調達等を進める強制的な権限行為について規定されています。
 まず、国の行政機関(地方支分局も含む)では、救助物資の製造、流通、運搬などを行う事業者に対して、物資の保管命令、収用を行うことができ(法5条1項)、そのための倉庫等への立入検査(法6条1項)ができます。
 都道府県では、救助実施のために、医療や土木、運輸関係の事業者に従事命令を発することができます(法7条1項)。また、現場の近隣住民などに対する協力命令(法8条)、救助物資等の保管命令・収用(法9条1項)、立入検査(法10条1項)を行う権限が付与されています。
 このほか、国、都道府県、市町村は、通信設備の優先使用(法11条)が認められています。
 同様な権限行使については、災対法にも規定がありますが、災害救助法の場合は、市町村の権限行使については規定されておらず、都道府県に権限が委ねられています。
 ただ、実際に災害が起こった際の物資等の調達の場面では、法令に基づく強制権限の行使による調達が行われることはほとんどなく、平時からの物資等の備蓄のほか、災害に備えた流通関係や運輸・土木関係の事業者と自治体による災害時応援協定に基づく調達が行われています。

(5)実施主体間の調整
 災害救助の実施に当たっては、都道府県が主な実施主体になりますが、大規模災害では、単独の都道府県だけでは対応できない場合も多々あります。
 そこで、法14条では内閣総理大臣の指示により、他の都道府県が応援を行うことができるものとされています。また、日本赤十字社も民間団体や個人での協力についての調整を行うこととされています(法15条2項)。
 自治体間でも、都道府県の事務として行われているものを、市町村が都道府県からの通知により、権限を移譲されて行うことができます(法13条、法施行令17条1項)。これは、地方自治法に定める事務処理特例の特則となっています(地方自治法252条の17の2)。地方自治法では都道府県の事務を市町村に移譲する場合、条例制定が必要となっていますが、災害救助法では「通知」で済むこととなっています。また、希望する政令市には一定の要件のもとに、都道府県の事務が移譲される仕組みもあります(法2条の2)。政令市への事務移譲については、東日本大震災の際に、応急仮設住宅の建設に関する事務のあり方に関して、宮城県と仙台市で議論があったことがきっかけとされています。

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