2020.08.11 議会運営
第72回 長に対する不信任議決/議長の議員辞職の取扱い
【法178条】
① 普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができる。
② 議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があつたときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があつた日においてその職を失う。
③ 前2項の規定による不信任の議決については、議員数の3分の2以上の者が出席し、第1項の場合においてはその4分の3以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない。
【法177条】
① 普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。
一 (略)
二 非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費
② (略)
③ 第1項第2号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決を不信任の議決とみなすことができる。
これを踏まえて設問を考察していくと、長は議会が行った100条調査において証人として出頭したにもかかわらず当該証言が偽証と認定され、議会から告発されているが、当該告発されたことをもって地方自治法における長に対する不信任議決とみなす法律要件を構成しない。にもかかわらず議会を解散することは、長の権限を逸脱濫用するものであるとして違法・無効な解散権の行使であるといえる。
この場合、選挙管理委員会が当該解散をどのようにみなすかについては、一般的には無効な長の解散行為とみなして選挙事務を行わないこととなろう。
それでも長が議会の解散を盾に審議における議会への出席拒否や専決処分の乱発を行う場合、議会は解散の無効を裁判所に提訴することとなると考えられる。
議長の議員辞職の取扱い
議長が閉会中に議員を辞職する場合、誰に対して辞職願を提出し、許可を得る必要があるのか。
議長が議員を辞職する場合、法126条に基づき開会中は議会の許可、閉会中は議長の許可を得る必要がある。
【法126条】
普通地方公共団体の議会の議員は、議会の許可を得て辞職することができる。但し、閉会中においては、議長の許可を得て辞職することができる。
そうなると議長が閉会中に議員を辞職する場合、議長である自分自身に対して議員としての自分が議員辞職願を提出し、自ら許可することとなるか疑義が生じるが、この場合は、議長は副議長に議員辞職願を提出し、副議長の許可を得ればよい。
これは、開会中において議長が議員辞職願を提出すると、当該審議において議長は法117条の除斥における一身上の事件に該当し、当該辞職願が議題になってから評決が終わるまで除斥の規定が働き、副議長の下で議員辞職の件を諮ることとなるのとバランスをとることとなるからである。
それゆえ閉会中においては、議長の議員辞職は副議長の許可により可能である。