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2020.08.11 議会運営

第72回 長に対する不信任議決/議長の議員辞職の取扱い

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明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

長に対する不信任議決

Q議会において100条調査委員会を設置し、その調査の中で証人として喚問した長の証言が偽証であると議会が認定した。そのため偽証罪で議会が告発を行ったところ、長が自らに対する不信任議決であるとして議会を解散した。当該解散は有効であるのか。

A長に対する不信任議決とは、長と議会で対立が起き、それが解消されないまま継続すると円滑な行政運営に多大な影響を及ぼすおそれがあることから、長と議会の調和を図るための制度である。
日本の地方自治制度においては憲法93条2項において、長と議員はそれぞれ住民から直接選挙により選ばれる二元代表制を採用していることから、原則として長は議会の信任を必要とすることなく、長と議会はお互い均衡・抑制・協調の中で行政運営を行うことが期待されている。

【憲法93条】
② 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

 しかし、日本の二元代表制は純粋な大統領制と異なり、議院内閣制の要素を取り入れている部分も存在し、そのうちの一つが本来、大統領制では認められていない長に対する不信任議決権である。
 国会での憲法69条における内閣不信任議決権では、不信任決議案が衆議院で出席議員の過半数で可決された場合のみならず、不信任決議案が衆議院で可決されなくても、内閣は衆議院を自由に解散する権限を有する。

【憲法69条】
 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 これに対し、地方議会における不信任議決は、議会の長に対する一定の要件の下での不信任議決権が前提条件であり、不信任議決権を議会が行使していないにもかかわらず長が議会を解散することは許されない。
 また、議会の不信任議決権行使に対する長の議会解散は地方自治法(以下「法」という)で要件が定められており、例えば長が推進する重要な政策を議会が否決することや100条調査に基づき長を告発することなどを、長に対する議会の不信任議決権の行使であると長の判断によりみなすことは許されていない。
 なお、地方議会で法的に認められている議会の長に対する不信任議決は、次のとおりである。
 ① 法178条における1回目の長に対する不信任議決で議員数の3分の2以上が出席し、かつ4分の3以上の同意がある場合。
 ② ①可決後に議会を長が解散し、解散後初めて招集された議会において法178条における2回目の長に対する不信任議決で議員数の3分の2以上が出席し、その過半数の同意がある場合。
 ③ ①又は②において同様の要件で長に対する信任決議が否決された場合。
 ④ ①又は②において同様の要件で長に対する辞職勧告決議が可決された場合。
 ⑤ 法177条1項2号における非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費を削除又は減額し、長が理由を示して再議を行ったにもかかわらず再度議会の議決が当該経費を削除し又は減額した場合。

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