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2020.07.27 議員活動

第4回 災害に対するレジリエンスを高める制度と仕組み

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(3)国土強靭化計画の策定
 国土強靭化基本法では、まず、国は、内閣総理大臣を長とする国土強靭化推進本部を設置し(15条、18条)、国土強靭化に当たって、最悪の事態を想定して分野ごとにボトルネックとなる脆弱性を抽出する「脆弱性評価」を行い(17条)、その結果をもとに施策を推進するための「国土強靭化基本計画」を策定します(10条1項)。
 国の国土強靭化基本計画に基づき、都道府県及び市町村も、地域ごとに脆弱性評価を行い、「国土強靭化地域計画」を自治体ごとに策定することとされています(13条)。
 国の国土強靭化基本計画、自治体の国土強靭化地域計画は、ともに国土強靭化に関わる他の計画の指針として位置付けられています(10条1項、13条)。つまり、国土強靭化に関連する各種行政計画の中で上位に位置付けられていることを法律上明示し、優先的な施策であることを示しています。
 国が策定した基本計画に基づく地域計画の策定を自治体に求めています。地域計画の策定に際しては、現状における地域の最悪の被害を想定し、これに対する脆弱性評価を併せて行い、施策ごとの数値目標KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定することとされています。KPIを設定する手法は、まち・ひと・しごと創生法(2014年制定)など、国の施策を誘導する方法として最近見られますが、防災面からは、定期的に様々な施策分野で状況を評価・検証することは、定着すれば有効な方法ともいえます。
 策定した地域計画の実効性担保と進捗管理を行うために、定期的な見直しや毎年度のアクションプランを策定している自治体も見られ、PDCAサイクルを回す仕組みが構築されています。

(4)国土強靭化地域計画の策定上の問題点
 一方で、自治体が国土強靭化地域計画を策定する際の問題点として、次のようなことが考えられます。
ア 脆弱性評価のレベル感の統一性の保持
 計画策定に当たって施策の脆弱性評価を実際に行うのは、事業担当課の担当者です。脆弱性評価を行うに当たって必要とされる「最悪の事態の想定レベル」については、担当者の知識・経験や条件設定などにより、ある程度の差が生じる可能性があります。また、自治体現場では、財政負担や事務量も無意識に考慮してしまいますので、この点でも想定に差が出る可能性があります。これらのレベル感の統一のためには、策定前に自治体全体の方針を明確にするとともに、管理監督者が十分にレビューすることなどにより合理的な範囲にまとめていくことが大切です。
イ 計画見直しに際してのマンネリ化の排除とKPIのゼロベースでの見直し
 一般的にいえることですが、行政計画のPDCAサイクルを回していくために自治体で定期的な計画見直しを行う際には、前計画の考え方をそのまま踏襲し、事業内容や数値目標も計画期間内で実行可能な目標をつい設定してしまう傾向が否めません。しかし、特に自然災害への備えを見える化するために策定する国土強靭化地域計画の見直しの場合は、気候変動や新たな科学的知見により、リスクの前提そのものが変わることが間々ありえます(1)。そのため、常にゼロベースで計画を考えていくことが大切です。
ウ アンブレラ計画としての位置付けの不明確性
 国土強靭化基本法13条では、自治体が策定する国土強靭化地域計画について、「国土強靱化地域計画以外の国土強靱化に係る当該都道府県又は市町村の計画等の指針となるべきものとして定めることができる」とされ、国はガイドラインで「国土強靱化の観点から、地方公共団体における様々な分野の計画等の指針となる」、いわゆる「アンブレラ計画」(2)、つまり自治体における最上位の計画と位置付けています。
 しかし、この計画が、国土強靭化に関して、当該自治体の最上位計画となることによる実態的効果は、法律上は見当たりません。少なくとも最上位計画としての実態や効果がないと、住民や議会に対して説明が難しいといえるでしょう。反面、法律上の実体的な効果が望めないので、自治体ごとの運用面での工夫の余地も大きいといえます。例えば、防災条例がある自治体の場合では、条例上の位置付けを付加した上で、計画の進捗状況の議会への報告や市民に対する説明などの仕組みを取り入れることによりPDCAサイクルが回るよう、独自の取組みを上乗せすることも考えられます。

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