2020.05.11 議会運営
第11回 議会による行政監視
行政監視の手段④──議決事項の追加
法96条1項は、議会の議決事件を列挙しています。これらは制限列挙と解されていますが、実際には自治体の行政運営の基本的な部分をほぼ網羅しており、議会による行政チェックの根拠となる重要な規定です。
さらに同条2項は、1項各号列挙以外の事項でも、一部を除き、当該自治体に関する事件を条例で議決事件とすることができるとしています。
法96条2項に基づき条例で追加されている議決事件の中でも代表的なものは、基本構想や基本計画、マスタープランなど当該自治体にとって重要な計画の策定・変更・廃止です。これらは「地域の未来」を中長期的な視点で描くものですから、議会としてもその内容をしっかりとチェックし、共有しようとする趣旨と考えられます。
「カルテ」と「処方箋」
こうして見てくると、議会による行政監視のための手段はいろいろあって、その「使い勝手」や「効き目」もそれぞれだということが分かると思います。議員は行政監視に必要なレベルに応じて、時に議員個人として、時に委員会や本会議の議決をもって、執行機関をチェックしていきます。その結果、課題の「キモ」が浮き彫りになれば、執行機関としてもその課題の解消と事務事業の改善に努めることとなるでしょう。あるいは、その方策について議会側が執行機関にアドバイスすることもあるでしょう。議会のもう一つの大きな役割である、政策立案・提言の機能です。住民の多様な意思をバックボーンに置き、行政監視のための手段を駆使して行政事務の「カルテ」をつくり、これに基づいて執行機関に議会としての「処方箋」を提示すること、これはまさに「地方自治の本旨」(日本国憲法92条)が議会に与えた本来の役割であると同時に、「地方公共団体の健全な発達」(法1条)の要といえるでしょう。議会による行政監視は、議会としての政策提言の基礎としても大切な役割なのです。
つながろう! 議会事務局
議会が行政監視を適切に進めるには、自治体内外の情報や知識の集積が不可欠です。そのためには、議会を補佐する議会事務局も、議会や議員による行政監視活動をサポートする「チカラ」を備えることが求められます。
これまで議会事務局は、議会の円滑な運営に主眼を置いて活動してきた傾向がありました。もちろんこのことは今後も重要ですが、各自治体の議会基本条例の多くが定めているように、議会が本来の役割を果たすためには、議会事務局の機能強化、特に調査能力、法務能力の向上もまた不可欠だと思います。
知識を増やし、法的な「チカラ」を蓄えることは一朝一夕にはできませんし、現状の議会事務局の職員数からすれば、相談する相手も限られてしまうかもしれません。しかし、どの自治体の議会事務局も、置かれている状況は基本的に同じはずです。そんな議会事務局職員同士が、他自治体への照会や議員の行政視察の随行、外部研修への参加などをきっかけに「ヨコ」につながり、お互いの知識や悩みなどを共有すれば、議会事務局の調査能力の向上にも必ずや大きく寄与することになるはずです。
(『自治体法務NAVI』「とっても身近な自治体法務シリーズ」2020.3.15号より転載)