2020.04.27 政策研究
第1回 防災・復興学へようこそ
第1講 なぜ、防災・復興を学ぶのか
1 防災・復興を学ぶ視点
「はじめに」でも述べましたが、防災・復興に関する政策を学ぶことは、地域の総合政策を学ぶことということができます。その際の視点として、次の三つを掲げておきたいと思います。
(1)防災、減災の視点
これは、地方議員、自治体職員として、最も基本的な視点です。過去に発生した災害が、どのようなメカニズムで発生し、それによりどのようなことが地域に発生したかを知ることにより、将来、同様な災害の発生を予防したり、又は発生した際には被害を最小限に食い止めるための教訓を学ぼうとするものです。
(2)復興の視点
この視点は、過去の大規模災害の被災地が、災害の規模や特性に応じて、どのような復興のプロセスをたどったかを学ぶことにより、同様な災害が地域で発生した際に備えて、有効な政策手段をあらかじめシミュレーションしておくものです。災害については、実は、防災、減災の側面は、大震災以降、各自治体に相当な知見が蓄積されており、地域防災計画などにも反映されてきています。しかし、大規模災害が発生した場合の地域の復興シナリオについては、十分な知見が自治体側にもないのが現状です。一方で、これだけ災害が頻発するような状況では、被災した場合の地域の復興をあらかじめシミュレーションしておくことも重要です。
(3)レジリエンスの視点
レジリエンス(Resilience)とは、「復元力」、「回復力」などを意味していますが、災害による被害をどのように最小化し、迅速に復旧・復興をしていくかということです。被災から復興に向けて反転攻勢するタイムラグをいかに短くするかということにもつながります。いわば、上記の(1)防災、減災、(2)復興のそれぞれの視点をつなぐ概念です。
例えば、大企業や官庁では、災害などに備えて「業務継続計画(BCP)」を策定し、あらかじめリスクを評価し、リスクに応じて業務の優先順位をつけて、災害時でも必要最低限の業務が継続できるように準備したり、被害を受けた場合の応急措置を定めて、顧客や住民への影響を最小限に抑え、通常業務への立ち直りを迅速に行う取組みをしています。このような取組みが可能なように、過去の災害で類似の組織がどのような被害を受け、どのように立ち直っていったかを検証することも重要です。