2020.04.27 政策研究
第1回 防災・復興学へようこそ
関東学院大学法学部地域創生学科教授 津軽石昭彦
第1回(第1講、第2講)のポイント
1 自治体の防災・復興政策を学ぶことは、自治体の危機管理、地域づくりの基本を学ぶことにつながる。
2 我が国は、世界的に見ても「災害列島」であり、多様な災害が各地で発生している。災害や地域の特性に合わせた自治体対応が求められる。
3 国民の災害に対する意識は「正常性バイアス」により決して高くはなく、自治体では住民の意識を高め、いかに具体の行動につなげるかが課題の一つである。
はじめに
今、世界は新型コロナウイルス感染症の猛威にさらされ、人々は不安と恐怖のどん底にいます。今回のような大規模にまん延する感染症は、法的には「災害」(1)には該当しませんが、多くの人が被害に遭って社会的に大きな影響があるという点では「災害」と類似した点が多く、広義では「災害」といえるかもしれません。今般改正された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」には、政府や自治体の対策本部の設置、土地等の使用などの規定がありますが、防災の基本法である「災害対策基本法」にも類似した規定があります。
その意味では、防災や復興の基本的な制度を学ぶことは、住民の安全・安心、自治体の危機管理を知ることにつながり、地方議員にとっては、標準装備としての基本的な知識ということになります。
また、大規模災害からの地域の復興は、災害の規模によっては、街を一からつくり直すことに等しく、地域創生、地域づくりの取組みそのものです。災害からの復興を考え、学ぶことは、議員の皆さんが日々腐心されている平時の地域振興の基本にも通じるところが多々あります。
毎年のように大規模災害が発生しており、防災と復興の中核を担う自治体の役割が極めて重要となっています。地方議会においても、災害が常に発生しうるものとして防災と復興に関する制度と政策に関するリテラシーを高めていくことが必要です。
筆者は、今は大学で、地方自治の観点から、自治体の防災・復興政策の教育研究に携わっていますが、9年前の東日本大震災(以下「大震災」という)の際には、被災地の岩手県庁の職員として、未曾有の大災害の被災直後から復興のプロセスに直接関わってきました。
この連載では、これから毎月1回、全12回の予定で、筆者自身の経験を踏まえながら、地方議員が押さえておくべき自治体の防災・復興の制度と政策のポイントについて、講義形式で学んでいきます。それでは、どうぞよろしくお願いします。