2020.04.27 議会改革
第7回 議会の運営─どのような仕組みとし、どう動かすか─
慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
1 議会の活動と期間
議会については、選挙のたびに議員の構成が変わりうるものであることから、選挙から次の選挙までの間の議員の任期が、活動の大きな区切りとなる。これを、「議会期」、「選挙期」などと呼ぶことができる。議会の意思や実際の組織は、議会期を超えて継続するものではない。
また、議会は、その沿革や機関の性格上、常時活動するのではなく、案件の処理のために一定の期間に限って開かれるものとされ、会期制が採用されてきた。そして、議会が活動するためには、定時的(自動的)集会による方法と、議会の招集行為による方法があり、この招集については、自律招集と他律招集の二つの方法がありうるが、地方自治法では、基本的に長の権限とされ(101条1項)、長が告示することにより行うものとされている(1)。
以上のようなことなどから、自治体議会については、定例会と臨時会の区別が設けられている。
このうち、定例会は、付議案件の有無にかかわらず定期的に招集されるものであり、毎年条例で定める回数を招集しなければならないものとされている(地方自治法102条2項)。定例会の具体的な招集時期は、招集権をもつ長の判断によることになり、規則でこれが定められることもある。
他方、臨時会は、必要がある場合に、あらかじめ告示された特定の案件を審議するために招集されるものである。臨時会の招集権者も長とされているが、①議長が議会運営委員会の議決を経て会議に付議すべき事件を示して招集の請求をしたとき、②議員定数の4分の1以上の者から会議に付議すべき事件を示して招集の請求があったときは、長は、請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければならないものとされている。そして、①の議長による請求から20日以内に長が招集しない場合には、議長は臨時会を招集することができるほか、②の議員による請求から20日以内に長が招集しない場合には、請求をした議員の申出に基づき、議長は、都道府県と市の場合は10日以内、町村の場合は6日以内に臨時会を招集しなければならないものとされている(同法101条2項〜6項)。
このように、臨時会については、長が招集請求を受けても招集しない事例も見られたことなどから、例外的にではあるが、議長が招集権をもつこととなった。議会の招集は統轄代表権をもつ長が行うべきとの議論も根強いが、議会の審議や調査の機会を広く保障する上では一歩前進といえるだろう。
なお、臨時会においては、付議すべき事件につきあらかじめ告示することを要し、告示された事件以外は原則として審議することができないが、開会中に緊急の必要があれば、例外としてその事件を直ちに会議に付議することも認められている。
議会が活動能力を有する期間である「会期」については、定例会・臨時会ともに、その延長も含め、議会が定めることになっている。会期中においては、集中的に審議が行われるが、それでも、毎日、本会議や委員会が開かれているわけではない。
会期については、それぞれに独立しており、会期中に議決されなかった案件は、次の会期に引き継がれないのが原則である(同法119条)。「会期不継続の原則」と呼ばれるものだが、その例外として、議会の議決により委員会の閉会中の審査に付した案件(同法109条8項)については、明文の規定はないものの、後の会期に継続するものと解されている。この継続審査により、当該案件については次の会期に改めて提案されることなく、審議することができることになる。
以上のように、自治体議会は、会期中のみ活動する機関とされており、それは、国会も同様である。
しかしながら、現代国家では、議会の役割の増大や活動の活発化、あるいは行政の監視・統制の必要性などから、議会の活動期間は一般的に長くなってきているほか、例えば、外国の議会では、会期制を廃止し、選挙から次の選挙までの期間を活動期とする「立法期」を採用するところや、会期制を維持しつつも会期不継続の原則を廃止するところなども見られる。立法期においては、議会の構成が同一である間、議会は常に活動能力をもち、議員の任期満了や解散によりその任期が終了するまでの期間が一個の活動期間とされることになる。ただし、立法期の場合でも、議会が実際に常時活動しているわけではなく、休会の期間といったものも設けられる。
議会において会期制度が採用されてきたのは、議会が国王の諮問会議から発達し、国王の諮問の必要に応じて召集され、その使命の終了とともに閉会となったという歴史的由来のほか、議会を常時活動状態におく必要性や、常に活動しうるとすることによる議事能率の低下あるいは行政の活動の阻害のおそれといった政策的な理由、さらに閉会の期間を通じての議員の選挙民との接触の機会の確保といったことなども挙げられる。それらは、いずれも実際的なものであり、会期制度が議会の運営にとって論理必然的なものというわけではない。
また、会期不継続は、議会の意思はそれぞれの会期ごとに独立であり、前の会期の意思が後の会期の意思を拘束すべきではないとの考え方に立って、前後二つの会期にまたがって議会の意思が継続することはないとするものである(2)。会期不継続は会期制度と密接不可分の関係にあるとする考え方も見られるが、歴史的に会期制度と会期不継続は結び付いていたとしても、会期制度と会期不継続の間に理論的な結び付きはなく、アメリカ連邦議会やフランス議会では、会期制をとりつつ意思や案件の継続を認めている。日本の国会や自治体議会では、会期不継続の原則を厳格に捉えようとする考え方が根強いが、会期不継続については、その内容が国や時代によって異なっており、伝統的な考え方に固執し厳格な原則と位置付けようとすることには疑問もないわけではない。会期不継続については、メンバーが変わらないのに意思を切断し、多くの時間や労力を費やした議案を葬ってしまうことの合理性などが問われるようになっているが、仮に会期不継続を廃止しつつ会期制を維持する場合には、会期は議会の活動期間の一つの区切りとしての意味しかもたないことになる。
以上のような中で、日本の自治体議会では、定例会を年1回とすることなどにより通年的に活動をする議会なども現れるようになっており、そのような自治体議会の動きや要望を受け、定例会・臨時会の区分を設けず、通年の会期とすることも認められることとなった。通年会期制は、議会が、条例で定めるところにより、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることを認めるもので、その場合には、議会は、その条例で定める日の到来をもって長が招集したものとみなされ、自動招集されることになる(地方自治法102条の2)。ただし、その会期中に議員の任期が満了したり議会が解散されたりした場合には、任期満了や解散の日に会期は終了し、それによって行われた一般選挙において選出された議員の任期が始まる日から30日以内に長により議会が招集され、当初の通年会期の終了日までが会期とされることになる。
もっとも、通年会期の場合にも、1年の会期として会期不継続の原則の適用があるものとされており、立法期の考え方が採用されているわけではない。
通年会期の採用により、議会の活動能力が常時担保され、審議時間が確保されることになるが、その一方で、執行部の側への質疑等が中心となる場合には、その負担や行政執行への影響も考慮する必要がある。このようなことから、通年会期を選択した場合には、議会は、条例で、定期的に会議を開く定例日を定めなければならないものとされているほか(3)、長などの議場への出席義務は定例日に開かれる会議の審議と議案の審議に限定されるとともに、それについても正当の理由があるとして議長に届け出た場合には免除されることになっている。すなわち、会議体である議会はその機関の目的や性格上常時活動するものではなく、通年会期は、弾力的な議会の活動のあり方を認めるものであって、会期制の場合のように一定の期間に集中的に開会するのではなく、コンスタント・定例的に会議を開くことにするものともいえるだろう(4)。