地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2020.04.10 議会運営

第10回 議員報酬の減額・支給停止

LINEで送る

制裁としての議員報酬の支給停止

  問題となるのは、制裁としての議員報酬の支給停止です。例えば、議員が犯罪容疑で逮捕・拘留あるいは起訴された場合に、「議会への出欠にかかわらず」議員報酬の支給を止めるというもので、こういった規定を条例に定める自治体もあります。
 現職の議員が犯罪容疑で逮捕・拘留されるという事態は、当の議員のみならず議会にとっても不名誉なことです。送検、起訴へと進めばなおさらです。住民から「議員の資質に欠ける議員」の辞職を求める声が上がり、議会が議員辞職勧告決議を可決してもなお、身の潔白や議員の職責を全うするなどと主張して辞めない議員もいるでしょう。そうなると、「居座り議員」に議員報酬等が支給され続けることへの住民の疑問や憤りが、議会に対する批判に発展することも想像に難くありません。
 制裁としての議員報酬の支給停止条項は、こうした住民感情を考慮して制定されるものと考えられます。ざっくりいうと、逮捕あるいは起訴された時点で議員報酬の支給を停止して、判決で無罪となれば停止されていた分も含めて支給を再開するが、有罪となった場合は停止されていた分を改めて支給しないこととする、といった仕組みが考えられるところです。

法律と住民感情のはざまで

 本人が辞職しない限り、議員を失職させることは法律上限られています。被選挙権の喪失は、禁錮以上の刑に処せられた(実刑となった)場合(賄賂罪など汚職の罪や禁錮以上の選挙犯罪の場合は刑の執行猶予中も含みます。公職選挙法11条1項参照)などに限られますから、逮捕・送検・起訴の段階では資格決定で失職させることもできませんし、懲罰の対象は原則として議会内での行為に限られるため除名にすることもできません。議員辞職勧告決議を可決しても法的拘束力はありませんし、議会としても、逮捕・送検・起訴の段階で当該議員を「クビ」にすることはいかんともしがたいのです。
 議員を「クビ」にすることで、議員の身分と一体である基本債権のレベルで議員報酬を失わせることが難しいのであれば、支分債権のレベルで議員報酬の支給を止めてしまう。世間から非難されてもなお居座る議員に対する住民感情を考えれば、この発想は大いに理解できます。住民代表たる議員で構成される議会としても、住民からの疑問や憤りの声、ひいては議会全体の信頼の失墜に、ただ手をこまねいているわけにはいかないでしょう。
 ただ、議員の失職も議員報酬の支給停止も、お金が支払われなくなるという事象としては同じです。議員を失職させる資格決定や懲罰の除名が特別多数議決であるのに対し(法127条1項、法135条3項参照)、過半数の賛成で制定できる条例で議員報酬の支給を止めてしまうのは「兵糧攻め」とも受け取られるかもしれません。
 現行の法律は、住民代表たる議員を「選良」と位置付けて構成されていると考えられます。いわば「性善説」的な法律と、そうではない議員が現れたときの住民感情。両者のはざまで、議員や職員が現状を直視した難しい判断を求められることもあり得るのです。
 さて、皆さんはどのように考えますか?

(『自治体法務NAVI』「とっても身近な自治体法務シリーズ」2020.2.15号より転載)

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る