2020.04.10 議会運営
第10回 議員報酬の減額・支給停止
ノーワーク・ノーペイの原則
以上を踏まえると、議員報酬につき減額・支給停止をする余地があるのは、支分債権としての議員報酬請求権です。そこで、前述の全国市議会議長会の調査による議員報酬の減額・支給停止事由について考えてみましょう。
まずは、病気等による一定期間の欠席です。一定期間議会を欠席するということは、その間は議員としての仕事をしていないとみることができます。報酬は役務提供の対価ですから、仕事をしない期間は、その期間に対応する報酬を得る根拠がないことになります。これを「ノーワーク・ノーペイ(Nowork,Nopay)の原則」といいます。欠席議員に対する議員報酬の減額は、この原則により正当化することができます。同様に、議員が逮捕・拘留その他身体の拘束を受けたときも、拘束を受けている間は議会に出席することはできませんから、その分はノーワーク・ノーペイの原則によって議員報酬の減額を正当化することができるでしょう。
では、懲罰による出席停止についてはどうでしょうか。これまでの事由と異なるのは、欠席の理由が議会の決定した懲罰であるという点ですが、出席停止の懲罰を受けた原因は当該議員の側にありますから、この場合でもノーワーク・ノーペイの原則により議員報酬を減額することはできると考えられます。もちろん、懲罰が適正になされたということが前提です(なお、出席停止の懲罰は内部的規律の問題であって裁判所の司法審査の対象とならないとするのが判例(最大判昭和35年10月19日など)ですが、議員報酬の減額を伴う場合は一般市民法秩序と直接の関係を有するものとして司法審査の対象となるとした裁判例(仙台高判平成30年8月29日)もあります)。