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2020.02.25 議会改革

第5回 揺れ動く議員像 ─これからの議員像をどう描くか─

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【コラム:政務活動費】
 
 自治体では、条例の定めるところにより、議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、会派又は議員に対し、政務活動費を交付することが認められているが、そのあり方が問われるような事態が各地で発生している。 
 政務活動費は、自治体議会の機能を強化するために議員の調査活動の基盤の充実を図り、併せてその使途の透明性を確保する観点から、2000年の地方自治法の改正により政務調査費として制度化されたものであり(14)、これによって、各地の自治体で交付条例が制定され、会派又は議員に政務調査費が交付されてきた。しかし、政務調査費をめぐっては、使途基準に違反する不正・不当な支出や実体のない支出が問題となり、各地で、住民の批判を招くとともに、住民監査請求や住民訴訟が提起され、監査委員の返還勧告や不当利得の返還を命じる判決などにより返還を余儀なくされる事例が続出した。 
 最高裁も、かすみがうら市政務調査費住民訴訟・最判平成22年3月23日判時2080号24頁で、議員が任期満了直前に政務調査費から物品を購入するなどの事実が認められ、調査研究のための必要性に欠ける支出であったことがうかがわれる場合は、特段の事情のない限り、その支出は使途基準に合致しない違法なものと判断されるとするとともに、事実の存否や特段の事情の有無を十分に審理することなく使途基準に反しないとした原審の判断は違法として、裁判所が使途基準に基づき必要性を十分に審査すべきとの立場を示している。
 そもそも、政務調査費であろうと政務活動費であろうと、あくまでもその趣旨の範囲内で使用されるべきものであり、残余が生じた場合や、その趣旨・使途基準等に該当しないものに用いられた場合には不当利得となり、自治体に対する返還義務が生じ
ることになる。そして、その使途をめぐり不適切な事例が頻発したことを受け、抽象的・概括的であった使途基準の具体化のほか、その支出について領収書等の写しを収支報告書に添付させ、それらを情報公開制度あるいは独自の閲覧制度によって公開する動きなども見られるようになってきている。 
 そのような中で、三議長会の働きかけにより、政務活動費に改正されることで使途が拡大されるとともに、政務活動費を充てることができる経費の範囲については条例で規定されることになったが、それに関してはそれぞれの議長会においてモデル条例を示している。その是非はともかく、それによれば、政務活動費は、会派・議員が実施する調査研究、研修、広聴広報、要請陳情、住民相談、各種会議への参加など、行政課題や住民の意思を把握し、行政に反映させる活動その他の住民福祉の増進を図るために必要な活動に要する経費に対して交付するものとされ、会派と議員ごとに充てることができる経費が別表で列記されている。
 交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、政務活動費に係る収入・支出の報告書を議長に提出することとされ、また、議長は政務活動費の使途の透明性の確保に努めるべきものとされており、その使途につきインターネットを通じて公開するところも増えている。
 小規模自治体では政務活動費を支給していないところも少なくなく、また、その額も自治体の規模等によって異なるものの、議員がその役割を果たすためには、政務活動費といったものが必要であることはそれなりに首肯できる。ただし、税金で賄われるものである以上、政策の立案・調査など議会の機能強化につながるものに使われるのが筋であるはずだ。住民の理解を得て持続可能なものとするためにも、その点から適正な額や使途のあり方が模索されるとともに、その支出の透明性を高め住民への説明責任を果たしていくことが強く求められているといえるだろう。

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