2020.02.10 議会運営
第8回 契約議案
予算との関係
契約は自治体の支出の原因となるもの(支出負担行為) ですから、契約を締結するには予算の裏付けがなければなりません(法232条の3)。したがって、当該契約に関する予算が可決される前に契約議案を提出することはもちろん、本契約の予約の性質を持つ仮契約を締結することもできません。
では、例えば、すでに議会の議決を得た契約に基づいて進めている請負工事で、当初予算で想定していなかった追加工事の必要性が明らかになったという場合を考えてみましょう。この場合、工事の完成は予定どおりに間に合わせたいとすると、執行機関としては、追加工事の費用を補正予算で措置した上で、これを反映した仮契約を締結し、変更契約の議案を議会に提出するという流れを速やかに行う必要があります。それには、①直近の定例会で補正予算案を先に審議(先議)し、可決後、当該会期中に追加議案として変更契約議案を提出する、②補正予算案を付議事件とする臨時会を招集し、可決後に緊急を要する事件(法102条6項)として変更契約議案を提出する、③補正予算の可決後、変更契約については法179条に基づき専決処分する、などいくつかの方法が考えられますが、いずれにしても、③の専決処分に委ねることも含めて、事態の緊急性などを踏まえた長と議会との調整が必要となるところです。
契約議案と議会の対応
では、議案の提出を受ける議会の方の対応はどうでしょうか。
そもそも契約は相手方との意思の合致により成立するものですし、前述のとおり契約の締結は予算の執行行為であって、長の権限に属します。したがって、議会は契約議案について可否を決することはできますが、契約内容を修正することはできません。 議会としては、契約議案が提出される前に、これに関連する予算を審議しています。実際には、議決事件に当たるほどの重要な契約に関する予算の内容であれば、予算審議の時点で執行機関の側から、予定する工事の目的や完成の見込みなど何らかの説明がなされ、少なくとも工事の必要性など政策的な論点については議論がなされているでしょう。したがって、予算が可決されていれば政策的な必要性については議会も理解しているわけですから、契約事務手続の執行段階においてよほどの問題点がない限り、契約議案についても可決されるのが通常だと考えられます。 とはいっても、契約の方法や事務手続の進め方など、議会が疑問に思うこともあるでしょう。議案を可決しつつ、附帯決議で今後の留意点など議会の考えを示すこともまた、議決機関の役割として意義あることと思います。
(『自治体法務NAVI』「とっても身近な自治体法務シリーズ」2019.12.15号より転載)