2020.01.27 議会運営
第69回 不穏当な言動と懲罰
さて、本問においては、他人の私生活にわたる言論及び無礼の言葉が懲罰に当たるかどうかは、一義的には議会が判断することとなり、除名の懲罰が科された場合に、裁判所が当該除名の議会の判断が違法かどうか判断を下すこととなると解される。その際に、議会が過去の不穏当な言論を考慮し、除名以外の懲罰を科したとしても裁判所は当該判断に介入せず、議会の自律権の範疇(はんちゅう)として取り扱うこととなることから、過去の不穏当な言論を考慮することは議会の自律権の範疇として可能であると解する。
留意を要することとして、懲罰の違法性を争うのではなく、議員の発言がそもそも無礼の言葉や他人の私生活にわたる言論に該当するかどうかを裁判で争うことは可能である。なぜなら、前掲昭和27年最高裁判決で「議員が果たしてどんな発言をしたかを確定することは事実問題であるが、その認定された発言が地方自治法132条の無礼の言葉を使用したことに該当するかどうかは裁判所が客観的に判断すべき法律問題であって、議会の主観的判断に拘束されない」とし、無礼の言葉や他人の私生活にわたる言論かどうかは最終的には裁判所が判断することができる問題であるとしているからである。こうすると、無礼の言葉や他人の私生活にわたる言論かどうかを裁判所の判断に委ね、その結果により該当しないとすれば、それを事案とした懲罰自体も違法性があるとなることから、最初の訴訟の入り口により裁判の対象になるかどうかが分かれてしまうこととなってしまう。
ちなみに本問で懲罰動議の提出に対し訴訟の準備があることや損害賠償請求を行うことなどを述べ、相手方に懲罰動議の撤回を暗に求める形での発言は、場合によってはさらなる不穏当発言と議会に解され、懲罰の加重事由になりかねないことに留意を要する。